競売物件を虎視眈々と狙う投資家も
武内さん、野田さんに共通しているのは、自身の給与は一切減っていないものの、世帯にとっての副収入的な存在だった妻の稼ぎが途絶えたという点だ。大黒柱ではなく、補助的な柱が倒れただけでも破綻に追い込まれてしまうのが、ペアローンの怖さといえる。
ペアローンによって購入された物件か否かは別として、コロナ禍を機に、物件売却を考える人は増えているようだ。都内の不動産仲介業者も話す。
「8月に入ったあたりから、自宅を売りたいと相談に来られるお客さんが増えている印象です。中年の所帯持ちで、物件は築10~15年であることが多い。ただ、住宅ローンの残高を清算してもさらに数百万円以上のお釣りがくる程度の売値を希望される方がほとんどで、その多くは高望みです。なかなか買い手はつかないのが実情ですよ」
住宅ローンの滞納が続き、自宅の売却もできないとなれば、最悪の場合は差し押さえられて競売にかけられることになるが、それを虎視眈々と狙う投資家もいる。
前出の不動産仲介業者は「コロナ禍によって、条件のいい住宅や民泊物件などが競売や任意売却に出されることが多くなっている。中には相場の半値程度で落札される物件もあり、任意売却の物件や競売不動産を買いあさる投資家にとっては今は千載一遇のチャンスといっていい」と話す。
競売の物件数もたしかに前年より増えている。2020年9月に首都圏で競売開始決定後に裁判所に公告された物件の数は、東京都が201件で前年同期比21%増、神奈川県が133件で同14%増、埼玉県が98件で同23%増、千葉県が117件で同23%増といずれも急増しているのだ。
マイホームを奪われる者がいるかと思えば、それを安値で買い叩こうとする者もいる。アフターコロナの住宅市場はまさに弱肉強食だ。