妻がコロナ禍で派遣切りに遭い、マンション売却を決意
「ひとり息子が小学校に上がる頃に、学区なども考えて6500万円で購入したのがその物件です。月々のローン返済額は約17万円。当時は、私も妻も会社員で、月の世帯収入としては60万円ほどあり、返済は余裕だと思っていました。しかし、息子を中学受験させることとなり、塾への送迎や勉強のサポート、塾に持たせる弁当の用意などのために3年前に妻が仕事を辞めたのです。翌年には息子が無事合格し、妻は派遣社員として不動産会社で働くようになった。月18万円ほどの収入でしたね。おかげで、ローン契約時とほぼ同程度の世帯収入にまで戻っていたんです。
しかし3月に入り、コロナ禍で派遣切りに遭ってしまい、無職になってしまいました。妻も40歳を過ぎていることもあり、新しい派遣先も見つからない。貯蓄の多くは息子の受験や入学金に使ってしまっていたので、ほぼゼロでした。私の月40万円ほどの収入だけでは、月8万円ほどの息子の学費を支払いながら、住宅ローンを支払うことは厳しくなってしまった。息子は今高校生ですが、この先大学にも行かせることを考えると、住宅費をカットするしかないと思い、8月に売却を決意しました」
幸いにも武内さんのマンションは5700万円で売れ、今は都下の家賃12万円の賃貸マンションで暮らしているという。
パート代の月8万円がなくなっただけで戸建てを売らざるを得ない
一方、妻の収入への依存度がさらに低い家庭でも、ペアローン破綻は起こり得るようだ。千葉県在住の自動車整備士、野田信次郎さん(40歳)が話す。
「6年前、子供が生まれたことをきっかけに、ペアローンを組んで柏市に3800万円の一戸建てを購入しました。当時、イケイケドンドンのローン審査で知られていた地銀Sでした。妻は知人が経営する飲食店でランチタイム前後の4時間だけパートとして働いていて、収入は月に8万円ほどだったのですが、それでも審査が通ったんです。
私の当時の手取り収入は28万円ほどで、私だけではどこも審査が通らなかったのでずいぶんと救われた気分でした。頭金を300万円ほど入れ、30年ローンで月々の返済額は約10万円。優遇金利の適用で1%弱でした。生活もそれなりに切り詰め、これまで返済の滞納は一度もありませんでした」
しかし4月、コロナの影響で野田さんの妻は勤務先の飲食店の経営が悪化し、解雇されてしまった。野田さんの収入はほぼ横ばいなので、8万円がそのまま減ってしまったかっこうだ。車のローン返済も月3万円あり、息子も小学生となって習い事なども始めていてお金がかかるようになっていた。
「最近はかなりカツカツな状態でローンを返済しており、パート代の8万円がなくなるとかなり辛い。妻にはすぐに別のパートを探させたのですが、コロナ禍ということもあって、子育てと両立できる時間帯のものはなかなか見つからない。ドラッグストアの求人1名に対し、20人以上のパート主婦が応募するらしいですからね。
結局7月と8月に立て続けに滞納してしまった。これが、『2度滞納が発生した場合は優遇金利を取り消す』という条件に触れ、金利が2.125%にアップ。月の返済額が1万円以上増えることになってしまった。このことが決定打となり、すでに妻とともに売却の意思を固め、今は不動産業者に相談をしているところです。売却ができれば、千葉のさらに奥地で中古物件を探そうと思っています」