「国民皆保険」は一度始めたら戻れない

日本の手法を取り入れれば、国民皆保険や公立大学の無料化などを、米国が実現することは可能だろう。ゼロエミッションも可能で、課題となる巨額の財政資金の調達も、70年強の日本国債発行額の増加を達成してきた実務に学べば、可能となるはずだ。

一方、例えば全米の州立および市立大学が無料になることを喜ぶ学生と、「無料化=学区化」として、州や市を超えた有名公立大学に入学できないリスクを不安視する学生がいる。かつてのソ連のように、「税金で大学に行く学生は遊ぶべからず」という考え方もはびこるかもしれない。その場合には、社会が混乱する種となるはずだ。

つまり、どの政策にも光と影があるわけだ。

それも社会主義は資本主義と異なる経済構造となるため、4年ごとの大統領選挙によって、行ったり来たりすることは不可能である。例えば、一度、米国健康保険庁を作ったのなら、それを廃止するのは容易ではない。つまり米国が国民皆保険を実践するとなると、それは不可逆的な政権選択であることを覚悟しなければならない。

米国民に見えていない「ゴールとなる世界の姿」

既に、共産主義化への一歩は始まっている。例えばワシントンD.C.では、今回の大統領選挙で、93%がバイデン候補に投票した。この事実は、まさしく共産主義の幕開けとも言えるだろう。中国や北朝鮮で行われている選挙に近いと言わざるを得ないからだ。

今春の下院でワシントンD.C.の州への変更法案が可決された。その後、トランプ大統領の反対と、州への変更によるコスト増などの問題等で滞っている。だが仮に承認されると、民主党の上院議員が2人増える。これによって、米上院は民主党が過半数を占める機会が生まれるのだ。

酒井 吉廣『NEW RULES 米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』ダイヤモンド社

過去のすべての暴力革命と同じように、サンダース上院議員は民主社会主義の国家像は示していない。だから、米国民のほとんどは、ゴールとなる世界の姿が分からないでいる。

スタンフォード大学の会議で「歴史上の成功例がない社会主義に若者がひかれる理由」という議論があった。そこでは、「もし理想が実現するならば」といった仮定を、誰も否定できないからだという結論に落ち着いた。

夢のような理想郷を求める米国社会主義は、若者や生活最優先主義者たちによって、着々とその実現に向かっている。だが果たしてその先が理想郷なのかどうかは、誰にも分からない。

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