民主党内は、すでに真っ二つに分かれている
佐藤和男青山学院大学名誉教授は、「極左は極右につながる」「真ん中も、左から見れば右」という名言を残している。コロンブスが西に向かえばジパングに到達できると考えたのと同じだ。
サンダース上院議員は、基本的にはバイデン候補を嫌っているが、それはバイデン候補がイラク戦争などの開始を支持したからだ。
上院議員は戦争をしないという点で、トランプ大統領と似た発想を持つ。エコ主義も、化石燃料を否定していけば、現状のほとんどの武器を使えなくできる、というところに行きつく。なお、トランプ大統領の最大の功績を歴史的に見るならば、戦争の種をなくす努力をしたことと言えるだろう。
ところが、伝統的な価値観にこだわる共和党と民主党は、こうした考えを受け入れなかった。
大統領選挙の終盤になって、バイデン候補がオバマケアの維持を叫び、バレット最高裁判事候補の公聴会で民主党上院議員が異口同音に「オバマケア」を守るのかと質問したのは、公的機関による国民皆保険への反論でもあった。既に民主党内は、真っ二つに分かれている。
共和党と民主党は「弱者の守り方」が違う
日本のメディアは、前回の大統領選挙で、トランプ大統領に投票した人が、今回はバイデン候補に投票したという例を報道している。ここで大切なことは、米国民が、自分たちの生活を守るためには、トランプ大統領の掲げた政策よりも、サンダース上院議員が掲げ、バイデン候補が引き継いだ政策の方が優れてると考えた点だ。今回の大統領選挙で共和党と民主党の掲げた政策の最大の違いは、「弱者の守り方」にあった。
今回の大統領選挙では、前回ならば圧倒的に赤色(共和党)に染まったラストベルトの州でも、化石燃料廃止を訴えて地元産業を否定したバイデン候補が、トランプ大統領と接戦を演じている。それほど、サンダース上院議員の政策に対して、地元が期待しているということだ。
米国の民主党内で、社会主義が浸透したことの典型例は、民主党中道派の期待の星である39歳のケネディ下院議員が、ペロシ下院議長などの支持を受けて上院へのくら替えを目指したものの、73歳の現職に予備選で敗れ、上院議員へくら替えできなかったことに象徴される。
ロバート・ケネディ元司法長官の孫という知名度であっても、オカシオコルテス下院議員などの支援を受けた、民主党現職のマーキー上院議員に敗れてしまうのである。それほど、社会主義を支持する層が増えているというわけだ。