アメリカの大統領選挙で、民主党のバイデン前副大統領の得票数が7000万票を超え、オバマ前大統領の記録を抜いて米国史上で最多となった。アメリカ共和党の大統領選挙アドバイザリーボードメンバーを務める中部大学の酒井吉廣教授は「米国で社会主義が支持を集めだしていることが、バイデン候補の追い風になった」と指摘する——。
国民皆保険、公立大学の無料化、最低賃金の引き上げ…
空前絶後の大接戦となった2020年の米国大統領選挙。
民主党のバイデン候補は、予備選で戦っていたサンダース上院議員の撤退と引き換えに、彼と政策協定を結んだ。その政策とは、国民皆保険、公立大学の無料化、最低賃金の引き上げ、そしてグリーンニューディール(ガソリン車の販売中止など、エネルギーのゼロエミッション化)などだった。まさに、社会主義でありエコ主義だったのだ。
米国では今、社会主義が若者の間に広がっている。人種や年齢の差を超えて、社会主義の人気が高く、民主党在籍の議員たちの中に、社会主義を支持する人も少なくない。米国では、そんな彼らを「進歩主義者」と呼ぶが、その実態はと言えば、「社会主義者」である。
サンダース上院議員は新婚旅行でソ連を訪れた生粋の社会主義者で、ソ連型共産主義を米国民主主義で管理する「民主社会主義」を信条としてきた。全米が彼の存在に注目したのは、2016年の大統領選挙の民主党予備選で、ヒラリー・クリントン元国務長官と最後まで指名を競った時のことだった。
社会主義者が民主党の枢要を握りつつある
現在は、民主党の副大統領候補であるハリス上院議員や、大統領候補として大企業の増税などを主張したウォーレン上院議員など、社会主義者が民主党の枢要を握りつつある。
2008年に女性イスラム教徒として初の下院議員となったタリーブ氏、2018年の選挙で彗星のごとく登場したオカシオコルテス氏、そしてソマリア出身のオマール氏という3人の注目を集める民主党議員も、サンダース信奉者であると表現して、間違いない。
しかし、長年の歴史でソ連をはじめとする共産主義国や社会主義国と戦ってきた米国に、なぜ社会主義が浸透してきたのか。米国を同盟国とする日本としては、ここを押さえておく必要がある。