安いけど「コンビニは競合ではありません」

洋菓子市場を分析しているTPCマーケティングリサーチの光山華代氏は、シャトレーゼの快進撃をこう分析する。

「工場で製造してはいるが、原材料は契約農家から仕入れており、競合社以上に『安心・安全』を強調することでイメージアップにつながっている。スーパーで売っているケーキよりは本格的で、高級店よりは手軽に買えるという『安くておいしい』路線において不動の地位を占めている」

その意味で現在の競合はコンビニだろう。ローソンをはじめ、各チェーンがスイーツに注力している。だが、意外にも同社は「コンビニは競合相手ではありません」と断言する。

「コンビニにはわれわれのような売り場はもてません。独自の調達ルートでその日に作った焼きたての商品を出すことができる当社にとって、競合はあくまでパティシエがいる専門店です」(広報)

近年の洋菓子業界は、コンビニスイーツの流行で生まれた“プチ贅沢”や“手軽さ”がトレンドとなっている一方、専門店の通販で高価なスイーツを取り寄せる人も一定数おり、緩やかな二極化が進んでいる。

写真提供=シャトレーゼ
青森県産ふじりんご使用アップルパイ(370円+税)。YATSUDOKIでは一番人気だという

安さを売りにしてきたシャトレーゼも2019年からはプレミアムブランドの「YATSUDOKI(ヤツドキ)」を立ち上げ、1号店を東京・銀座に開いた。シャトレーゼの「スペシャル苺ショート」は300円だが、ヤツドキの「八ヶ岳川上村契約農場の苺ショートケーキ」は540円でグッと価格帯を引き上げている。今後は大阪や札幌、福岡など全国の都市部に順次出店する計画で、「品質が専門店にも通用するか見てみたい」(齊藤会長)と期待を寄せる。

課題は認知度とブランド力

一方で課題もある。シャトレーゼの主力である郊外のロードサイド店は、人口減少と過疎化でいずれ衰退は避けられず、頭打ちになっている。また、同社が自負する契約農家の多くは地元・山梨県やその近隣に集中しており、全国展開を進めれば原材料の調達ルートの確保は難しくなる。

大ヒットを記録した「チョコバッキー バニラ」。価格は1本60円(+税)写真提供=シャトレーゼ

北海道と九州の店舗ではケーキやプリンなどの生菓子に限って現地の製造工場で作っており、今後はいかに“山梨ブランド”を守れるかがカギとなりそうだ。

広告宣伝よりも品質向上を優先するという当初からの経営方針から、テレビCMなどは打っておらず、同業の不二家と比べれば全国的な認知度はまだ道半ば。これだけ店舗が増えていることを知らない消費者も多いはずだ。同社も「ファンを取り込むためにロイヤルティーをもっと高める必要がある」(広報)と認める。

驚くほどおいしくて、驚くほど安い。そんなシャトレーゼの快進撃はいつまで続くのか。洋菓子業界の競争激化に注目が集まっている。

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