インフルエンザでも「合併症」は起こる
新型コロナ感染症は後遺症を残す合併症がひどいので、注意が必要という不安を継続させる報道が続いていることにも警戒が必要です。例えば、「新型コロナで脳損傷の可能性、合併症に警戒を 英研究」(※7)とか、「コロナで重症化しなかった人々、様々な後遺症続き絶望の日々」(※8)、「新型コロナ 退院後も7%に“生活に支障” 呼吸機能低下など」(※)、「認知症の状態が悪化40% 新型コロナによる生活の変化で」(※10)と高齢者の方が心配する報道も続いています。
一息入れて考えてみましょう。ウイルスによる合併症は、コロナウイルス特有のものなのでしょうか?違います。
インフルエンザでは、インフルエンザ脳症が有名です。また、食中毒をおこすO-157などの腸管出血性大腸菌は、溶血性尿毒症症候群(HUS)というものをひきおこします(※11)。微小な血管障害や血管内に血栓ができて急性の腎障害を起こすものです。感染症は重症になると、それぞれ独特の合併症をともなうものです。皆さん、インフルエンザの後遺症の恐怖を引きずっていますか?
また、厚生労働省と文科省の『医療等の供給体制の総合化・効率化等に関する研究』という研究のお手伝いをしました。報告書で、高齢者の方は骨折や肺炎などで入院されると認知機能が落ちてしまい、医療機関を渡り歩くことも多々あることをお示ししました。医療機関の情報伝達と生涯にわたる医療設計の概念の必要性を論文化しました(※12)。
活動性が制限され脳への刺激が減ると認知機能低下につながることは、一般的にもよく知られた事実です。コロナウイルスに限ったことではありません。
今必要なのは「社会的な終焉」だ
現在は発症者と治癒者がほぼ同数が継続する、感染増大期が終わった後の蔓延期が6月初旬から数カ月続いていることを示しました。
PCRは感染力を反映しないことや、手間の多さから現場で即座に結果を得るというのには使い勝手の悪い検査であることをお話ししました。インフルエンザのような簡易キットが登場すれば通常はそれで済むでしょう。
簡易検査キットなどが使えるようになり、「熱が出たので受診したら、インフル陰性だけどコロナ陽性だった。家で寝てるね。安静期間は、インフルと同じ扱いでいいんだって」ぐらいになると良いと思っています。
ウイルスや細菌感染症には、それぞれ特徴的な合併症が存在します。高齢者では感染症だけでなく骨折などの入院治療が認知機能に影響します。どれもが、新型コロナウイルスに特有のものではなく、それ以外のコロナウイルスでも起きてくると言うべきものがほとんどです。
現在の状況がこのウイルスの「疫学的な終焉」の形態だと私は思っています。このまま、感染者の増減を繰り返すだけでしょう。今、必要なことは「社会的な終焉」を、自分たちで作ることです。私たち自身が、毎年流行し死者も出す、11年前の新型インフルのようにウイルスの恐怖から離脱し、不安を終わらせてしまうことが社会的な終焉となります。