昇進試験は不合格、5年かけて気持ちを切り替えた
もともとローソンに入社した理由は、「成長するマーケットの中で一緒に自分も成長していける職場だと感じられたから」。
学生時代に大手ショッピングセンター「ジャスコ」でアルバイトを経験して流通に関わる仕事に興味を持った。当時はまだ新興産業で街中に少なかった「コンビニ」に可能性を見いだして飛び込んだのが37年前。
それから今に至るまでにコンビニ業界は飛躍的に発展し、マルチコピー機、宅配便、コーヒー提供、イートインコーナーなど多機能化が急速に進んだ。その都度、店舗と足並みを揃えて丁寧にコミュニケーションする姿勢が問われてきた。
長いキャリアの中では挫折も踊り場も経験したのだと振り返る。
入社当時には出世を夢見ていた。入社15年目を迎えた頃に昇進試験にも挑戦するも2度の不合格。力不足を感じると共に、時に強い口調で引っ張らなければならないマネジメントの立場は向いていないのではないかと次第に思うようになった。5年ほどかけて気持ちを切り替え、「現場の店舗指導の道を究めていこう」と方向を定め直した。
「現場を離れてトレーナーの役職に就いたときは、正直、モチベーションが下がりかけた時期もありました。けれど、その時々の立場の中で自分なりの目標をみつけたら、達成感を抱けます。それが、長く働き続けるコツだと思います」
好きな言葉は「生涯一捕手」
好きな言葉は「生涯一捕手」。高校球児だった五十嵐さんが尊敬する故・野村克也氏の言葉だ。
「スーパーバイザーの仕事も、野球のポジションで例えるならば捕手のようなものかもしれないですね。決して前には出ない。しかし、店舗というグラウンドで、選手の守備位置を考え、全体の士気を高める“守備の要”。そんな役割をこれからも果たしていけるとうれしいです」
37年勤めた会社を、この7月で卒業した。定年後はローソンに再就職する。「やっぱりね、この会社に愛着がありますから」。
「ストレートしか投げられない」と悩んでいた五十嵐さんは、“生涯一捕手”として胸を張れる今を生きている。