ミソジニストたちの歪んだ正義感

ミソジニストが固く信じている「全てはフェミニストによる陰謀である」という世界観は、否定することが意外と難しい。

坂爪真吾『「許せない」がやめられない』(徳間書店)

陰謀論は複雑な現象を明快な論理や物語で説明できるため、納得感や高揚感を得やすい。統計的事実よりも、人の感情を動かす物語の方が、説明力や共感力、伝播力が圧倒的に高いからだ。

結果として、ミソジニストたちは、「自分たちだけが、見えない真実を見ることができる」「だからこそ、この真実をもっと広く知らしめなくてはならない」「そのためには、どんな手段をとっても許されるはずだ」という歪んだ正義感を抱くことになる。

こうした正義感は、男性を搾取する女性に対する怒り、そして「女尊男卑」を正当化している社会に対する怒りとして、暴力的な形で表面化することがある。

国内ではまだSNS内での小競り合いで収まっているが…

ミソジニストの中には、女性専用車両(痴漢免罪)に反対する立場から、「女性専用車両は女性優遇・男性差別であり、女尊男卑の象徴である」「追い出すべきは痴漢であり男性ではない」「推進派は、反対派=痴漢の加害者というレッテル貼りをしている」といった主張をSNS上で繰り返している人たちがいる。

彼らの発言は、フェミニストからの批判や反発、そして同じ意見を持つ男性たちからの賛同や擁護の中で、次第にエスカレートしていく。

最終的には、「推進派の女性は感情でしかものが言えないので、力ずくで闘うしかない」「とにかく男性の賛同者の数を集めて女性専用車両に乗車し、形骸化させるしかない」といった、実力行使を正当化するような主張へと発展していく場合もある。

国内ではまだSNS内での小競り合いや中傷合戦程度で収まっているが、海外ではミソジニストたちの暴力が、現実の世界において陰惨な形で暴発してしまう事件が起こっている。

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