ちなみに、広島の原爆慰霊碑の碑文はこうなっています。

「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」——この碑文については、当初から今に至るまで、「日本人が過ちを犯したのでその罰として原爆が落とされた」と読めると抗議が続いてきました。これに対し、広島市は次のような説明をしてきました。

「この碑文の趣旨は、原子爆弾の犠牲者は、単に一国一民族の犠牲者ではなく、人類全体の平和のいしずえとなって祀られており、その原爆の犠牲者に対して反核の平和を誓うのは、全世界の人々でなくてはならないというものです」

いかにも無理があると感じるのは筆者だけではないでしょう。

しかしWGIPについての知識を踏まえると、広島市がなぜこのような意味不明の、空疎な説明しかできないのかがよくわかります。

「アメリカの言い分」をそのまま紹介する原爆の資料館

長崎はどうかというと、こちらでは「原爆資料館」という名称になっているのですが、原爆投下にちなんで作られた像はやはり「平和祈念像」と呼ばれ、それは「平和公園」のなかにあります。

「平和記念資料館」(広島)と、「原爆資料館」(長崎)の展示の説明パネルにも問題があります。原爆がどのように作られ、使用されたかについてパネルなどで説明されているのですが、驚くのは、アメリカ側の言い分をそのまま紹介していることです。

有馬哲夫『日本人はなぜ自虐的になったのか:占領とWGIP』(新潮新書)

たとえば、長崎の原爆資料館の被爆者の証言ヴィデオでは、最後にインタヴュアーは「原爆を投下したことは正しいことでしたか」という質問を被爆者にします。これに対してほとんどの証言者は「戦争を終わらせるためにしかたなかった」と答えています。そして、最後に「原爆投下の正当性については賛否両論があります」と画面に出てきます。日本人が慣らされてしまった締めくくり方です。

これはまったく間違った認識です。なぜなら原爆は日本を降伏させるためではなく、ソ連の勢力拡大を抑えるために威嚇として使われたからです。正当性など微塵みじんもありません。

そのことをアメリカ軍幹部はよく認識していて、認める発言もしています。また、アメリカの歴史研究者もそのような研究書を多数発表しています。ところが、当の日本では、NHKを筆頭にそうした事実を伝えようとしません。その問題については次回に譲ります。

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