「もう一度行きたい」と感じていただける空間を

客にとって、マンションを買うということは、単にモノを買うことではないと石田は力説する。

「お客様はマンションを買うのではなく、マンション購入後の暮らし、夢を買うのです」

モデルルームでの接客は、まさにテーマパークのアトラクションといっても過言ではない。例えば浴室の広さを説明する際には、浴槽の中に販売スタッフ自らが入り、足を伸ばす。「ご主人が帰宅されて、湯船でゆっくり足を伸ばされると、疲れもとれますよね」。販売スタッフのトークに引き込まれるように、客も湯船に体を入れ、大きさを体感する。子供たちの笑い声や、はしゃぐ姿も見られる。


「買わされる恐怖」とは無縁のモデルルームとスタッフ。

「モデルルームで販売スタッフ自らが実演することで、お客様にも大きさや機能性を体感していただくよう心がけています」

不思議なもので、実際にモデルルームでお風呂場や収納スペースの広さなどを体感すると、購入後に得られるライフスタイルが具体的にイメージされ、購入意欲が高まる。そこに販売スタッフの絶妙な合いの手が入れば、なお一層「欲しい」と思うようになるだろう。モデルルームはまさに、客の「欲しいという気持ちを高める空間」なのだ。

正直、同じ地域で同時期に販売されているマンションには、床暖房、セキュリティーシステムなど製品面においては大差がない。「だからこそ、モデルルームでの第一印象が大切だ」と石田は言う。

「テーマパークからの帰り道には、『もう一度、行きたい』と思いますよね。モデルルームも、テーマパークからの帰り道のように『もう一度、行きたい』と感じていただけるような空間をつくりたかっただけなんです」

客の“本気度”に関係なく、警戒心を抱かずに出入りできる場が成果を呼ぶ。「売ろう」とするのではなく、「買いたい」と思わせる仕掛けづくりが、季節を問わず好調な実績の原動力となっているのではないだろうか。(文中敬称略)