販売促進は売り手の立場で客にアプローチするため、「売りつけられた感」や「買わされる恐怖感」を抱かせてしまいがちだが、購買促進はあくまでも客に自発的に「欲しい」と思わせる活動だ。「売りつけられた感」や「買わされる恐怖感」も生まれない。この「自発性」がキーワードとなる。

石田はモデルルームに足を運んだ客に対し、名前や住所などを書かせるアンケートをやめた。そして、まずは世間話などをしながら心理的距離感を縮めていったのだ。

「まずは身近な話題から入り、お客様ご自身から『家の購入の相談に乗ってほしい』と言われる雰囲気づくりをすることが重要です。お客様から連絡先を知らせたいと言われてからはじめて、住所などをお伺いします」(石田、以下同)

客と販売担当者の間で「相談できる信頼関係」ができあがると、客から家を買うきっかけや、希望する間取り、ライフスタイルなどをじっくりヒアリングする。客の要望を詳細に聞けば聞くほど、希望に沿った間取りや返済プランなどを提案できる。この段階においても、物件のPRなどは積極的に行わない。

「もちろん、お客様から尋ねられた場合はPRポイントについてお話しさせていただきますが、買いたいという気持ちが強いお客様ほど、ご自身で住宅情報誌やインターネットを通じて物件研究を重ねてらっしゃいます」

つまり、売り手の説明は、買い手の“本気度”が高いほどありがた迷惑であり、客離れにも繋がりかねないのだ。石田によれば、客足の遠のく時期にモデルルームを来訪する人々は、実はそうした“本気度”率が高いという。

「お客様の数が少ないのは、“二八”よりも年末年始の12月と1月。そういう時期に来ていただけるお客様には、むしろ買う意志の強い方が多い。ご自分でしっかり調べて来られるので、ご説明する必要もないくらい」