約8分の動画を目の当たりにして震え上がった
ジョージ・フロイド事件がこれまでと違ったのは、8分46秒の殺人の模様全てが動画に収められ、全米の人がそれを目の当たりにしたことだ。その恐ろしさに人々は震え上がった。
そしてもう一つこれまでと大きく違ったのは、これが新型コロナウイルスによるパンデミックの最中だったということである。
31歳の黒人女性アシュレーさんは、
「今、多くのアメリカ人がコロナの恐怖の中で生きている。多くが失業し、これまでの全てが崩れ落ちて混乱している。でもそれがむしろ多くの人たちの共感を生み出していると思う。白人も、黒人がこれまで感じてきたことをほんの少しでも感じるようになっている。だからコロナ禍でずっと家にいた人たちが、命のリスクを負ってでも参加すべきだと感じているのだと思う」
20代匿名の白人女性はこう言う。
「パンデミックでデモ参加は不安だったが、それ以上に重要だと思ったから白人のアライ(協力者)として参加した」
アジア系アメリカ人のステファニーさんは、
「白人含めこれだけダイバース(多様)な人が集まっているのを見ると、これは黒人だけの問題ではないと皆がついに目覚めたのだと感じる」
それだけではない。特に白人の若者たちはこれまで気づかなかった事にも気づき始めている。
ビリー・アイリッシュが白人に対して怒った理由
「この問題は私たち白人の責任であることに気づいた。だからもっと勉強しなければと思っている」。そう語るのは、筆者がプロデュースするFMラジオの番組「NYフューチャーラボ」の出演者の1人でもある21歳の大学生メアリーさんだ。
また冒頭の白人女性エミリーさんは「白人がもっと白人の特権について考えてほしい」と訴える。
実はアメリカでここ数年の間に広がったハッシュタグに、「オール・ライブス・マター」というのがある。ブラック・ライブス・マター運動に対し、全ての命にも価値があるのに、なぜ黒人ばかりが権利を主張するのだ? という一部の白人の言い分である。
それに対し、白人は自分たちの特権をあまりにも知らなすぎるから、黒人の苦しみにも気づくことができないのだという反論が、白人から巻き起こっている。それを代表するのは今年のグラミー賞で主要4部門を総なめにした18歳のスーパーアーティスト、ビリー・アイリッシュだ。