企業も行動しなければ“差別容認”と思われる
6月2日、人種差別を考える啓発運動「ブラックアウト・チューズデー」が開催された。真っ黒に塗りつぶされたソーシャルメディアのポストがあふれたことを覚えている人も多いと思うが、実はこれを発案したのはレコード会社などエンタメ業界だった。彼らがアップルやアマゾン、フェイスブックといったテック企業と共に、ブラック・ライブス・マター運動への賛同を表明したのだ。
コカ・コーラ、マクドナルド、ナイキのほか、医薬品大手のMerckやファッションブランドのコーチ、エンタメ業界ではMTV、Netflixなども次々に声明を出し、運動への協力を表明している。
そこには企業としての思惑ももちろんある。運動の中心になっているミレニアル・Z世代は、すでにアメリカの消費人口のほぼ半分を占めている。そして特にZ世代の半分近くは白人以外の有色人種でもある。こうしたダイバースな消費者に対応していかなければならないからだ。
マーケティングの専門家は、これまでの環境問題や移民問題とは全く違い、企業としてのコメントを控えることの方がリスクがあるとしている。つまり人種差別に反対しなければ、賛成していると思われても仕方ないというところまできているのだ。
しかしメッセージや寄付はしたものの、今後こうした企業が実際にどう職場や雇用における人種差別や偏見を排除していくのだろうか? という懐疑的な見方も残っている。
次の目標は「差別的な政治家を落選させる」
大規模な抗議運動は地方政治にも大きなプレッシャーを与え、それがすでに少しずつ結果に繋がり始めている。ニューヨークとロサンゼルスの市長は、警察予算を削減し公立学校など低所得者のコミュニティーをよくするための予算に充てると約束した。今回の事件が起きたミネアポリス市では警察組織自体を解体して再構築しようという動きにまで発展している。
一連のデモを「社会変革をリードする市民運動」と絶賛しているクオモニューヨーク州知事は、警官の不祥事の履歴を公表する法案をまもなく承認する見込みだ。連邦議会下院では民主党が新たな法案を提出してニュースになった。
そして次は11月の選挙がやってくる。
40歳の黒人男性カリードさんは、
「まず抗議デモで連帯することで、我々が同じことを感じているという共有ができた。そして次はしかるべき政治家を選ぶ投票だ」
抗議運動の次は、人種差別的な政治家を選挙で落選させるのが目標なのだ。そのターゲットは大統領や上下院議員のみならず、市会議員や地方検事も含まれる。制度的人種差別をなくすには、それを動かす政治から変えなければならないという考え方だ。