世界の政治、経済、文化の中心であるアメリカ・ニューヨーク市。新型コロナウイルスの感染拡大で、この街に住む著名な富裕層は、大半がほかの都市や州に避難したといわれている。そのなかで、唯一、同市にとどまり続けて、情報発信を続けている人物がいる。政治リスク分析を専門とする米コンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長で政治学者のイアン・ブレマー氏だ。なぜ今もニューヨーク市を離れないのか。米東部時間4月22日(日本時間23日)にリモートでインタビューを行った。
「多くのお金持ちが市民と同じ経験を共有していない」
——4月16日に配信された動画によると、あなたの友人がことごとく別荘に避難する中、「なぜ、今もニューヨーク市にいるのか」と、多くの人から聞かれるそうですね。
米国同時多発テロのときも、ニューヨークにいた。ここは私の街だ。大半の人々がニューヨークに残っているのに、どこかに避難するなどという考えは、しっくりこない。とりわけ、私のように経営者で公共の場に出るような人間の場合はそうだ。
同時テロでは、すべてのニューヨーカーがともに恐怖を味わったが、今回の危機では、多くのお金持ちが市民と同じ経験を共有していない。それが気がかりだ。富裕層の友人はロックダウンから1~2週間で、(マンハッタンの東にある高級避暑地)ハンプトンズやニューヨーク州北部、フロリダなどに避難した。ほぼ誰もニューヨーク市に残っていない。
私もマサチューセッツ州南方の島に家を持っており、その点では、ものすごく恵まれていると思う。飛行機で難なく行ける。このリモートインタビューをビーチから行うこともできた。でも、そんなことをする気にはなれない。いい気分がしないのだ。何かおかしい、と感じてしまう。