携帯の料金プランがわかりづらいのは、ある意味で必然
心理学に「ゲシュタルトの法則」というものがあります。これは「人間はまず大まかな全体の印象を認識し、部分や細部はその印象に合うように解釈する」というものです。
これは、まさに今回のDMにもあてはまります。いったん「使い放題で月3480円の良心的なプランである」という全体的な印象が形成されると、DM下部にびっしり並んでいる細部の情報も全体的な印象に合わせて都合よく解釈してしまうおそれがあります。
次に、赤字から目を離して下部を見てみると、細かい字で大量の注意書きが記載されています。しかし、ここでは「できるだけ面倒なことを避ける」という「思考の経済化」法則が働くので、これらの注意書きはザッと読み飛ばしてしまう人も多いのです。
よくよくこの注意書きを読み解くと、DMに記載された「3480円」という料金は、自宅のインターネットをソフトバンク系列にしたとき適用される「おうち割光セット」、家族4人で契約した場合には2000円が割引される「みんな家族割+」、契約から半年間だけ適用される「半年おトク割」の3つの割引を適用させたときの料金です。
実際には契約状況によって料金は変化し、最大で月7480円の料金を払う必要があるのですが、最初に「使い放題で月3480円」という印象を形成しているため、「もっと高くなりそうだ」という新たな認識が、「認知的不協和」と呼ばれる混乱を生み出します。認知的不協和は強い不快感やストレスを発生させるため、この矛盾した認識を抑圧するため「心理的防衛機制」が働き、「3480円以上かかりそうだ」という事実を否定するのです。
心理学的に見ると、こういった仕組みが張り巡らされた携帯の料金プランがわかりづらいのは、ある意味で必然だといえるのです。賢い消費者になるためには、四則演算的な賢さだけでなく、こうした心理学的トラップに負けない賢さも必要になるでしょう。