また、クリック後に「有料会員登録」「30万円」「IPアドレス」「ID番号」などという、いつもと違った情報が矢継ぎ早に飛び込んでくることで、被害者は一種のパニック状態に陥ります。こういった状況では、被害者はパニックを収束させることを優先するのですが、サイト側が状況を収束させるために提示しているのは「サイト運営者(詐欺師)との電話」です。もちろん、電話をかけても無料で事態が収束することはありません。詐欺師は被害者の不安につけこみ、何かと理由をつけて金銭を振り込ませようとします。

心理学者 富田 隆氏

つまり、状況を収束させようとするあまり、自分から詐欺師の懐に飛び込んでしまうような事態が起こるのです。

もちろん、ワンクリック詐欺の最もよい対処法は「無視すること」であって、直接電話をすることは悪い結果しか招かないのですが、パニック状態の中で人が合理的な行動をとれないことは心理学的な多くの研究が証明している通りです。

また、こうした詐欺はアダルトサイトに関連づけることで、被害者の「孤立化」を狙います。人間は仲間と協力して力を発揮する社会的動物ですが、性的なプライバシーにつけこみ、仲間に相談しにくい状況をつくり出すことで、被害者をパニックの中に孤立させます。仮に、ワンクリック詐欺に使われるサイトが「仏像の紹介動画」のような、誰に見せても恥ずかしくない内容のものであれば、多数の被害者が出る状況には至っていないはずです。

こうした心理的トラップが多く仕掛けられている現状では「詐欺に遭うのはおろかな人だけ」とは言い切れないのです。自らを過信することは、かえって危険なのです。

このプラン、結局いくらなんだよ!

携帯電話(スマホ)の料金プランといえば、多くの方が「難解でわかりづらいもの」という印象を持っているのではないでしょうか。携帯ショップで店員さんにいろいろと説明を受けても、「結局いくらかかるのか」がよくわからなかった、という経験をしたことがある人も少なくないはずです。

このように、携帯電話会社が発表する情報から「結局いくらかかるのか」を推測することに苦手意識を持っている人が多いように感じます。ですが、IT系メディアや雑誌などでは、比較的情報が整理され、プランのメリットやデメリット、料金面などがわかりやすく解説されていることも多いです。

同じ料金プランについて語っているにもかかわらず、携帯電話会社側の発表したプランを「わかりづらいもの」として認識してしまう理由のひとつに、携帯電話会社側の「見せ方」が関係していると私は思います。

ソフトバンクの「メリハリプラン」を紹介するDMを例に考えてみます。まず目に入るのは、赤字で最も大きく書かれた「使い放題」という文言です。その下には「3480円/月」と大きな赤字で書かれています。これらが最初に目に入ってくることで、私たちの中に「使い放題で月3480円」という印象が形成されます。