「お客様第一主義」を絶対視しない

ポイント③もはや顧客ではないと割り切る

島田直行『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』(プレジデント社)

クレーマーに対して毅然とした対応ができないのは、相手が「お客様だから」という意識が根底にあるからだ。サービス業として顧客第一主義という言葉を繰り返し耳にしてきた。

そのために「お客様」というだけで何を言われてもむげにできない、ということになってしまう。クレーマーにしても「自分は客だから」ということで従業員よりも優位な立場であるように攻めてくる。

カスハラをはじめとしたクレーマー対応において一番大事なのは、「このような言いがかりをしてくる人はもはや顧客ではない」という割り切りである。

ここを最初に抑えておかなければいくら交渉術を学んでも中途半端な対応しかできずに問題の解決にはならない。相手の発言に「怖い」と感じたら上司に報告して「クレーマーとして対応していきましょう」と方針を固めるべきだ。

もしかしたら上司が「それでもお客様だからうまくやってよ」と曖昧な姿勢で回答するかもしれない。そのときには「私たちは感染のリスクを背負いながらも現場に立っています。不当な要求を相手にしたら現場はさらに混乱します。うまくすることができないから困っています」とはっきり答えるのもひとつだ。

上司から言われて「わかりました。なんとかします」では自分の負担を増すだけで終わってしまう。

まじめな従業員ほど要注意、ワンチームの対応が重要

ポイント④個人ではなく組織で対応する

まじめな従業員ほど言いがかりに対して自分でなんとか解決しようと努力をする。特に新型コロナウイルスの影響で店舗の従業員は過酷な労働に疲弊している。普段の業務に加えて感染防止のための作業やイライラする消費者への対応もしなければならない。

そういう状況下では同僚に助けを求めることが言いだしにくい雰囲気になっている。こういった助けを求めにくい環境は、カスハラ被害の温床になりがちだ。

クレーマーは、自分の意見を通すために従業員個人の問題として話をすりかえてくる。例えば「どうしてマスクを用意できないのだ」と言われても「会社として用意できないからです」というのが正しい答えになる。それでも従業員は「申し訳ありません」とひたすら謝罪することになる。本来であれば個人として謝罪するようなことではないはずだ。

カスハラをはじめとしたクレーマー対応は、個人ではなく組織として対応することが鉄則だ。「個人でなんとかしよう」と努力するほどに相手からの威圧的に態度に抑え込まれてしまう。特に感染拡大で現場としてもイレギュラーな出来事が増えているはずだ。