「自分の考えがすべて」「自分が優位でないと落ち着かない」

クレーマーの最大の特徴は、「自分の考えがすべて」ということだ。物事をすべて「自分」を主体にしてとらえるため自分の考えが実現しないことに耐えられない。だからこそ、クレーマーは自分が不当な要求をしているという認識を持っていないことが多い。

「なぜマスクを用意できないのだ」と従業員に詰め寄る客は、新型コロナウイルスへの不安以上に自分の思うようにいかないことへの不満こそがモチベーションになっている。

人は、不満を抑えることができなくなると冷静な判断もできなくなる。現在のような危機的な状況で冷静さを失うことは最も危険なことである。冷静さを失った客が、自分の感情のまま従業員にあたってしまう。本人にはそれが不当な要求という意識がないならなおさらだ。

「自分が優位でないと落ち着かない」。これもクレーマーの特徴の一つだ。周囲がたしなめても「余計なことを言われる筋合いはない」と反論されてしまう。店員がそれをたしなめたところで、一方的に罵詈雑言を受けるだけ。それがカスハラの怖いところでもある。

「おそらく来月には」は絶対NG

カスハラ被害からわが身を守るのは、自分しかいない。コロナ禍と呼ばれる非常事態のもとでクレーマーからわが身を守るために抑えておくべき視点をお伝えしよう。

ポイント①「わからない」とはっきり伝える

新型コロナ関連の特徴のひとつがわからないことが多いという点だ。誰しも手探りしながら日々暮らしているようなものだ。これはマスクの流通にしてもしかり。マスクについては世界で争奪戦が繰り広げられている。

原材料価格は高騰し、供給量も限られている。このような状況下において従業員に「いったいいつになったら入荷するのか」と声を荒らげてもわかるはずがない。

こういう時にやってはいけないのは、わからないことについて曖昧な回答をすることだ。「おそらく来月には」とはっきりしないことを口にしてしまうと相手としては「確実に来月にはある」と解釈してしまう。

こうなるとさらなるトラブルになってしまう。危機的な状況においては,さまざまな情報が錯綜してしまいがちだ。それゆえ「わかる部分」と「わからない部分」をはっきりさせなければならない。そのうえでわからないことについては,わからないと説明するべきだ。

曖昧な回答がさらなるトラブルを生む

弁護士として、社員に対する休業の企業説明会に同席することがある。社員は「いつまで、いくら賃金が支払われるのか」「いつ会社は再開するのか」など聞きたいことが山ほどある。私は説明会では「その部分についてはまだわかりません」とはっきり説明をする。そうすると社員もわからないなりに納得してくださる。