「よいしょ!」が出る人は身体を動かすのが上手

分かりやすい例として、まず椅子からの立ち上がり動作で説明しましょう。

椅子から立ち上がるときは、必ず一度お辞儀をするように上体を前にかがめてから立ち上がります。体を起こす前に、自然と私たちはそれと反対の前にかがむ動きをとるのです。これこそが「反動」です。

前にかがめる下向きの力を筋肉、腱のバネ作用で上向きに返すため、スッと体を起こして立ち上がることができます(図表1)。 

バネを使った反動動作のポイントは、お辞儀をしてから体を起こす動作へと「動きを切りかえす瞬間」にポンと力を出すことです。「よいしょ!」という声が出ることがありますが、切りかえしで強い力を発揮するときに、つい声が出るのです。

ですから、「よいしょ!」は、反動を使った動きでうまく力を発揮するためのかけ声といえます。年寄りくさいと思わないでください。むしろその声こそ、活動的に体を動かせている証拠。「よいしょ!」をどんどん使っていただきたいと思います。

試しに、この反動動作を少し大げさにして立ち上がってみてください。反動をバネにしてすっと立ち上がるという感覚がよくお分かりになるはずです。

上体を前後させて、反動で上る

そして坂道や階段を上る動作。こちらでも同様に反動で、腱のバネを利用できます。もちろん「よいしょ!」のかけ声はとても有効です。

まず、前足を着地するとき少し前かがみに上体を倒しましょう。そこから「よいしょ!」と切りかえして、上体を起こしながら上ります。

椅子から立ち上がる動作で行うような、上体を前後に振る動きを交ぜた歩き方とでもいえば分かりやすいでしょうか(図表2)。

反動動作は本来自然に行うものなので意識しませんが、階段の2段跳ばしや3段跳ばしにチャレンジしてみれば、上体を前後させて、反動を使っていることが実感できるはずです。

この反動の動きを普段から意識して、強めにできるようになれば、ずいぶんラクにスイスイと坂道や階段を上れるようになります。階段を上るのも楽しくなる(?)でしょう。

慣れてきたら、階段の1段跳ばしや、大股での坂道上りを普段使いにしてみてはいかがでしょうか。ただし、階段を踏み外せば思わぬ事故につながります。十分に気をつけて行ってください。特に雨で滑りやすいときの階段などでは絶対にやらないこと。

なお、人前で「よいしょ!」はちょっと気恥ずかしいかもしれませんね。そのときはやむを得ません、心の中でつぶやきながら階段を上るようにしてみてください。