「逆に専門分野の力がおろそかになったら元も子もない」
英語学者の渡部昇一は、『英語の早期教育・社内公用語は百害あって一利なし』(李白社)という本の中で、「いま一匹の妖怪が日本を徘徊している。英語教育という妖怪が」として、英会話を重視する最近の風潮に警告を発している。
ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英博士も、やたら英語を気にする最近の風潮に疑問を投げかけている。
「若いうちから英語に追いまくられていたら、そんな時間がもてなくなりはしませんか。それで4技能(著者注:聞く、話す、読む、書く)が身についたとしても、逆に専門分野の力がおろそかになったら元も子もない。英語はあくまでも他者に何かを伝えるための道具、手段なんですから」(朝日新聞2014年11月26日付)
英語ビジネスの戦略を疑ってみる
では、なぜ大学入試で英会話を重視したり、小学校で英語が正規科目になったりするのだ、と訝しく思うかもしれない。そんな動きがあるくらいなのだから、英会話を早くから学ばせることには教育上大きなメリットがあるに違いないと思う人もいるかもしれない。だが、ここは慎重に考えるべきだろう。わが子の将来がかかっているのだから。
マーケティングを学んでいる学生が、「必要ないものを欲しがらせ、買わせるのがマーケティングの醍醐味だ」などと開き直ったようなことを言うことがあり、私はそんな考えで後悔なく真っ当な人生を送れるだろうかと疑問をぶつけたりすることがある。だが、たしかにビジネスというのはそうした価値観で動いているようなところもある。
子育てしている親たちも、ビジネスの場では、そうした戦略に触れることがあるはずだ。子どもビジネスのマーケティング戦略に疑いの目を向けてみることも必要だろう。