インパクトが先行し、開発計画は広く伝わっていなかった

新駅の概要が発表されたのは2016年9月。建築家の隈研吾氏が駅デザインを担当すること、日本の魅力を発信していくために、伝統的な折り紙をモチーフにした「和」を感じられる駅にすることと、駅の完成イメージ図が発表された。実はこのプレスリリースでも、「新しい街の中核となる新駅」との位置づけは明確にされているものの、新駅のインパクトが前面に出てしまい、まちづくりの計画は広く伝わらなかった。

その後の経緯をたどると、2017年にJR東日本と独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)などが「品川駅北周辺地区まちづくりガイドライン」を策定。同事業が国家戦略特区の都市再生プロジェクトに認定されたのは駅名公募直前の2018年5月。都市計画手続きに着手したのは公募中の同年9月のことであったが、この段階まで再開発プロジェクトによって誕生する街の全体像や完成イメージが示されることはなかった。

「虎ノ門ヒルズ駅」は違和感がないのに…

そして肝心の街の名前は未だに発表されていない。JR東日本のまちづくりを認知していても「グローバルゲートウェイ品川」が街の名前であるかと勘違いしている人は少なくないが、これはあくまでも開発コンセプトであり、「六本木ヒルズ」や「日比谷ミッドタウン」のような、再開発エリアの正式な名称は決定していない。

ここで対比したいのは今年6月6日に地下鉄日比谷線に誕生する新駅「虎ノ門ヒルズ駅」だ。同駅の駅名が発表されたのは、高輪ゲートウェイ駅の名称が発表された翌日(2018年12月5日)だったが、高輪ゲートウェイに対して批判的な声が相次いだのに対して、虎ノ門ヒルズ駅は自然と受け入れられ、賛否の声すら上がらなかった。これは、虎ノ門ヒルズという再開発プロジェクトが広く周知されているため、新駅が虎ノ門ヒルズに直結する玄関口であると受け止められたためであろう。虎ノ門ヒルズ駅の名称は、虎ノ門ヒルズの玄関口として「看板に偽りなし」であった。

しかし、高輪ゲートウェイには示すべき街の名前が存在しない。結果的に突飛な名前が前面に押し出され、矢面に立たされることになった。新しい街の玄関口として作られる駅にもかかわらず、その街の名称が決定していない段階で看板を作るのは困難である。