結局、オリンピックに振り回されただけ
なぜこのような、ちぐはぐな事態になってしまったのだろうか。最大の要因は、まちびらきをする予定の2024年ではなく、それより4年も早い2020年に駅を開業させたからだと言えるだろう。JR東日本は2014年の発表で、その理由として「2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会にあわせた暫定開業を予定しています」としている。
先般、延期が決定した2020年東京オリンピックでは、高輪ゲートウェイ駅前にパブリックビューイング会場「東京2020ライブサイト」が設置される予定だった。JR東日本としては、オリンピックに合わせて駅を大々的に売り出すタイミングを狙ったものと思われるが、結果的に利用者とのすれ違いを生んでしまったとすれば皮肉である。
オリンピックは2021年7月に延期が決まったが、工事の進捗により、駅前に同様のスペースを設けることはできないだろう。結局、オリンピックに振り回されただけとなれば、悲惨としか言いようがない。
新エリアの名前は「高輪ゲートウェイ街」?
もっとも駅名騒動から1年以上が経過し、コロナウイルス禍の真っただ中にあっては、全ては過去の話である。最初は違和感があったとしても、繰り返し聞いているうちに馴染んでしまったという人も少なくないだろう。
しかしJR東日本にとって、駅周辺で行われる再開発が成功を収めるかどうか、これからが本当の勝負である。しかもJR東日本による都市開発が知られていないということは、現在進行形の課題だ。
ここで懸念されるのが、新たな街の名称を巡る動きである。2019年4月からJR東日本は、2024年のまちびらきに向けて新しい文化・ビジネスをつくるための仕組み作りとして「TokyoYard PROJECT(東京ヤードプロジェクト)」と称した活動を行っている。再開発コンセプトである「グローバルゲートウェイ品川」「高輪ゲートウェイ」に次ぐ、新たな用語が出てきたことで、新しい街のブランディングはますますややこしくなってきた。
筆者は、新たな街の名前は素直に「高輪ゲートウェイ」になるものだと考えていたが、どうもこの問題は一筋縄ではいかなさそうだ。この決定次第では、高輪ゲートウェイという駅名の妥当性を巡る議論が再燃する可能性も否定できないだろう。