「高輪駅」では紛らわしくて使えなかった

高輪ゲートウェイといえば、想起されるのが駅名決定をめぐる「騒動」だ。JR東日本は2018年6月に同社では初めてとなる駅名の公募を実施。応募案を元に、同年12月新駅の名称を「高輪ゲートウェイ」に決定したと発表した。

ところが応募数でみると、1位は「高輪」が8000件超、2位は「芝浦」が4000件超、3位が「芝浜」で3000件超だったのに対し、「高輪ゲートウェイ」はわずか36件に過ぎなかった。これでは公募の意味がないとして、駅名撤回を求める署名活動まで行われたほどだった。

もちろんJR東日本にも言い分はある。駅名公募のプレスリリースには、「応募された駅名は応募数による決定ではなく、ご応募いただいたすべての駅名を参考にさせていただき、新しい駅にふさわしい名前を選考します」と明記されているし、地域名としては公募で1位となった「高輪」を採用している。

単体で「高輪」や、駅の所在地である「港南」を駅名に使用すると、品川駅の「高輪口」「港南口」と紛らわしいし、「芝浦」は再開発するエリアからは外れた田町寄りの地名である。公募上位の駅名がそのままでは使えない理由はいくらでも挙げられる。

実は新駅エリアの名称はまだ決まっていない

駅名ばかり目立ってしまっているが、実は高輪ゲートウェイ駅周辺の開発予定地にはまだ街の名前が付けられていない状態だ。今回の騒動の本質的なすれ違いは、JR東日本が「再開発される街の玄関口となる駅」の名称を求めていたのに対し、利用者や地域は「品川~田町間にできる新駅」の名称として受け止めていたことにあるのだろう。実はこれも当初からJR東日本は明確にしており、プレスリリースには次のように記されている。

田町~品川駅間では「グローバル ゲートウェイ 品川」のコンセプトワードのもと、国際的に魅力のある交流拠点の創出と『エキマチ一体のまちづくり』の検討を進めています。世界中から先進的な企業と人材が集い、「えき」と「まち」とが一体的な空間として感じられる新しい街。この街の玄関として2020年に誕生する新しい駅の名前を、私たちは皆さまと一緒に考えたいと思います。

しかし、利用者の考える「まち」とは既存の街であり、新たにできる「えき」は既存の街の玄関口であると受け止められた。ここに新しい街が開発されることや、それがJR東日本の手によって開発されることはほとんど知られていなかった。その状況は、おそらく駅が開業した今も変わっていないはずだ。