「マークシート=ただの暗記」という勘違い
【齋藤】基本的なフレーズの記憶を測定するのであれば、それは筆記試験でも可能ではないでしょうか。たとえば会話文の一部分を空欄にして、そこに当てはまる文はどれか、という選択問題にすればいい。
【鳥飼】それがセンター試験のマークシートで今までやってきたことですよね。そのほうがむしろきちんと測れます。
【齋藤】マークシートというのは、単に暗記力を試すだけではなく、活用力を含めて測れるわけです。一部には「設問が単純になる」という批判もありますが、それは違います。
そこをあえて変更し、受験生の発音を直接聞いて測定するつもりだった、と。では、その採点基準はどうなっているのでしょう?
【鳥飼】それがよく分からないんですよ。文法が正確かどうか、発音やイントネーションが流暢かどうか、どちらの比重が重いのか、民間試験ごとに違います。
TOEFL iBTのスピーキングだと、「話し方」として発音やアクセント、明確さ、「ことばの使い方」で語彙、構文、文法、表現、「論理展開」で一貫性、的確さ、具体性などをみます。IELTSのスピーキングは、「流暢さと一貫性」「語彙力」「文法の正確性」「発音」の四要素です。発音については、「正確」「聞きとりやすい」などの基準にしている民間試験が多いですが、どこまで母語の影響を受けた英語が許容されるのか。どういう英語なら英語として通じるのかというのは微妙なので、厳密な採点基準は難しいでしょう。
厳密に採点できるのか、疑問が多い
【齋藤】しかも、各業者によってもバラバラなわけですよね。たとえば日本語で話す力をテストすると考えてみると、なかなか難しい。まして英語となると……。
【鳥飼】採点しやすいように、短く一言で答えられるような設問にして答えさせるのだとしたら、実際にコミュニケーションに使えるかどうかは判定できないでしょう。
【齋藤】英作文でも、長くなると採点基準が複雑になって難しいですよね。話すとなると、そこに発音などの不安定な要素も加わります。厳密に採点できるのかという疑問が残ります。
【鳥飼】採点者が聞き取れない場合はどうなるのか。英語としては正解でも、発音が聞き取りにくい場合はどうなるのか。難しいですよね。