そもそも「四技能」は別々に学ぶものではない

【齋藤】だいたい制度というものは、一気に変えるより徐々に改良していくほうがいい結果を生みやすい。現在の英語のセンター試験の場合、すでにリスニング問題は組み込まれています。だからそれをより重視する方向で改良すれば、コミュニケーションに関する能力は測れると思いますけどね。

【鳥飼】その通りで、四技能を個別に測る必要はないんです。これまでのセンター試験では、「読む力」と「聞く力」を測ることで、総合的に発信能力も見ようとしていました。それでいいんじゃないかと思いますけどね。四技能というのは、外国語教育で昔から言われてきたことですが、別々の技能を教えるのではなく、読んだことをもとに書いたり聞いたり話したりして、総合的に学ぶものです。試験だって総合的な力を測定すれば良いので、なぜ「スピーキング力」を別に測定しないとならないのか解せません。国立大学が民間英語試験のスコアを出願資格にするということは、英会話ができないと国立大学を受験できないことになってしまいます。

それに「話す力」というのは採点が恣意的になりやすい。「話す力」の何を採点するのか、採点基準をどうするのか、誰が採点するかなどによって結果が違ってきます。

試験での話す力と、現場で話す力は別物

【齋藤】どう採点するのかというのは、非常に難しいですよね。

【鳥飼】海外にデータを送って採点してもらうという民間試験が複数あります。「一部海外」とか「アジアや欧米などの海外拠点」とか。採点者の要件も、「英語の教授資格、三年以上の指導歴」としている試験団体もあれば、業者による「面接や試験など」としか公表していない民間試験もあります。

そもそも選抜試験で話す力は測定できるのか。あるいは測定する必要があるのか。私の答えは両方とも「NO」なんです。正確に測定するなどできないし、必要もない。

選抜試験で話す力を測るとすれば、会話の定型表現を覚えているかどうかを見るのでしょう。つまり暗記力の測定であって、現実の場での話す力を測ることにはなりません。

【齋藤】話す力というと、言葉が次々に出てきて自在にコミュニケーションできる力、というイメージがありますね。しかし試験で点数をつけるとすると、ある程度記憶したフレーズで測るしかない、と。

【鳥飼】そうです。外国語を習得する場合、基本的な語彙や語句や定型表現を覚えて練習することは重要です。でも、それだけでは、すぐに話せることになりません。