この4月から小学校高学年で英語が「教科」となる。教科書を使って勉強し、成績がつけられるのだ。だが、英語教育に詳しい立教大学の鳥飼玖美子名誉教授と明治大学の齋藤孝教授は、その内容に不安を隠さない。どこに問題があるのか――。
※本稿は、鳥飼玖美子・齋藤孝『英語コンプレックス粉砕宣言』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
「ペラペラ幻想」が生み出した小学校の英語教育
【鳥飼】公立小学校でも現行の学習指導要領では英語が必修になっていて、5~6年生を対象にした「外国語(英語)活動」で、歌やゲームなどで遊びながら英語に親しむことになっています。「英語に親しむ」のが目的でしたから、文字は教えない、中学英語の前倒しはしないという建前でした。
ところが2020年度からは、5・6年生の英語は教科になり、検定教科書を使って勉強し、成績もつきます。これまでの「外国語(英語)活動」は、3・4年生におりますが、1年生から英語を始める小学校もあります。新学習指導要領では、小学校の4年間で、600から700語の英単語を習得することになっています。
本書の一章では「日本人には根強いペラペラ願望がある」という話をしていますが、小学校の英語教育も根っこは同じで、「早くからやればペラペラ話せるようになる幻想」が生み出した教育政策だと考えています。
【齋藤】今の大学生は、小学生時代に「外国語(英語)活動」を経験しています。彼らに「どうだった?」と尋ねると、8割方は「あまり意味がなかった」と。そういう哀しい評価です。ALT(Assistant Language Teacher /外国語指導助手)と呼ばれるネイティブ・スピーカーの先生が授業をするわけですが、楽しいのは英語ができる子だけ。ほとんどの子は特にやることもなく、ただラクな授業だったという印象しか残っていないようです。