教職課程の授業で「フレディ・マーキュリー」になりきった
【齋藤】「まず隗より始めよ」で、私が最初にフレディ・マーキュリーになり切って“I was born to love you……” と歌ったんです。別に発音はうまくないですが、度胸だけはあるので(笑)。
そうすると、最初はビビっていた学生たちも、もう逃げられないと観念すると突き抜けて歌うようになる(笑)。人前で歌う以上、原曲を聞いて一生懸命に練習するので発音のトレーニングになるし、度胸もつきます。
【鳥飼】いいですねえ。齋藤孝さんがフレディ・マーキュリーを熱唱するというだけでも、すごい。その教職課程の授業をぜひ参観させていただきたいです。
【齋藤】今の学生はわりと音感がいいので、歌はうまいんです。しかも英語もそれなりに勉強している。だから英語の曲を歌うと、発音がいっそう際立ってくる。急に英語がうまくなったように感じるんですよ。最近ではラップをやる学生も出てきて、それがすごく速くてうまかったりする。
その意味で、カラオケは英語教師を目指す人のみならず、英語の発音に自信を持ちたい人にとって最高のツールだと思いますね。
【鳥飼】たしかに最高ですよね。英語で話せと言われても、一人ではなかなかできません。でも歌なら楽しいじゃないですか。
【齋藤】そうなんです。すべての日本人は英語の持ち歌を最低一曲は持っていただきたい。外国人と話していて言葉に詰まったら、“I was born to love you……” と歌えばいいんです。
いつも「荒城の月」では寂しいですから(笑)。
小学生こそ、歌で発音を学ぶのに向いている
【鳥飼】発音のトレーニングのために英語で歌うというのは、本当にいいアイディア。もっと浸透するといいですね。
【齋藤】特に小学生は、歌に限らずものまねが好きで、耳で覚えてしまうので、こういうことが得意ですよね。以前、私は『からだを揺さぶる英語入門』という、シェイクスピアの名言をはじめとした英文の本を朗読CD付きで出したことがあります。英語を読めない小学生がそのCDを聞いて、『ジュリアス・シーザー』の一節を惚れ惚れするような正確な発音で暗唱できるようになりました。
【鳥飼】身体で覚えていく年頃なんですね。好奇心をうまく利用するのは効果的かもしれません。
【齋藤】英語の得意な私の友人に言わせると、正確な発音ができれば、正確に聞き取ることもできるようになる。たしかに「l」と「r」など、自分で使い分けられないと人の発音も聞き分けられないでしょう。
【鳥飼】そのとおりです。どう違うか分からないと、聞き分けられない。そして聞き取れるようになれば、自信がついて話すことにつながる。いいサイクルに入るわけです。