リクルートが以前のレベルまで売上を回復するには、身の毛もよだつような4年間が必要だったが、それでも、その経験は貴重だった。リクルートはインターネットエコノミーで成功するには何が必要かをこれで理解することができたのだ。当時、コンサルタントや学者たちは、まだ事態をよく把握できていなかった。

規模が規模を呼ぶ「ネットワーク効果」

ビジネススクールの教授陣の間では、「ネットワーク効果」という言葉がよく使われる。この言葉は、ウーバーやエアビーアンドビー、アリババなどの台頭を説明するものだ。これらの企業は、2面的な市場(プラットフォーム)の役割を果たす。供給側では売り手の販売を促進し、需要側では買い手の購買を促して、モノやサービスの売買を可能にする。

こうしたプラットフォームの価値は、主に両側のユーザーの数によって決まる。つまり、より多くのユーザーが同じプラットフォームを使えば使うほど、そのプラットフォームの魅力が高まり、さらに多くのユーザーが利用するようになるのだ。

例として、デートサイトを考えてみよう。男性がこれらのサイトに引き付けられるのは、そこに女性がたくさんいて、その分よい相手に出会える確率が高いからだ。女性の場合も同様である。こうしたネットワーク効果によって、ユーザーはより大きなネットワークにアクセスするために、より高いおカネを支払う。そうして、それを運営する会社の利益も、ユーザーが増えるに従って増えていく。規模が規模を呼ぶのである。

しかし、差別化は実現しにくい。ウーバーとリフト、アイメッセージとワッツアップを比較してみればわかる。プラットフォームはよく似ている場合が多く、競争は「速く成長するものが勝ち」という点に絞られる。だからこそ、フェイスブックは成長に強くこだわっている。

競合他社に先駆けオンライン上の首位を固める

より多くの人々が、フェイスブックやスナップチャットでニュースを読んだりゲームをしたりして時間を過ごすようになると、コカ・コーラやP&Gやナイキなどの企業がそこに広告を出稿するようになる。プラットフォームが一定の規模になって初めて、その独占的な地位は揺るぎのないものになる。

リクルートもこれと同じロジックに従った。オンラインへの転換を最初に行うことによって、また価格戦略において競合企業よりも攻めに出ることによって、インターネット上での市場首位を固めたのだ。同社は、インターネット事業の第一の黄金律にその運命を委ねた。