かしこい消費者の考え方
ここでは、被験者たちがヒューリスティックによる直観的な判断を行っているため、外的に誘発された気分の原因が、誤って商品に帰属されたからです。事実、誘発されたムードが、商品と無関係であることを(ヒントを与えて)強制的に意識させたり、商品のことをよく考えるよう、熟慮型の意思決定プロセスの発動を促したりすることによって、評価に対するムードの影響が弱まることが確認されました。
かしこい消費者は、購買状況において、いまの気分が何に起因するのか、それが商品と関係しているのかをよく考えることが重要です。そして、特にポジティブなムードのときには、注意が必要です。ヒューリスティックを使うことにより、その場の気分に流され、商品を過大評価する傾向が強まって、不本意な買い物をしてしまうことがあるためです。
ムードがポジティブなときに注意!
最後に、ムードが購買行動に与える影響を、衝動買いの文脈で考えてみます。衝動買いは情動的、直観的な意思決定プロセスを用いるため、非合理的な判断や購買後の後悔につながる可能性が高くなります。したがって、人はどのようなときに直観的な意思決定プロセスを用いる傾向が強いかを理解すれば、衝動買いが起きやすい状況が分かります。
商品に関連する要因では、関与(興味)が低いか、知識(能力)が低い場合に、そして商品に関連しない要因では、ムードがポジティブなときに、それぞれ、直観的な意思決定プロセスが使われやすいことを説明しました。
直観的な意思決定プロセスの特徴として「努力を要さない」があるため、情報処理、自己制御などの認知資源が枯渇していると、それが発動されやすくなります。したがって、空腹や疲労のとき、あるいは頭の中でさまざまなことが並列処理されていてストレスがたまっている状況において、直観的な意思決定プロセスによる衝動買いが起きやすくなります。食事も取らずに遅くまで残業した帰り道、ついコンビニで無駄な買い物をしてしまう人がいるかもしれません。それはまさにこのようなメカニズムが働いているからなのです。
その他の商品に関連しない要因としては、男性より女性が、また驚きや新奇性といった快楽的欲求が強い人の方が、衝動買いをしやすいことが既存研究から分かっています。衝動買いは、あなたが驚きや新奇性を好み、気分がよいときや空腹・疲労・ストレスのとき、関心が低かったり、知識のない商品に対して起きやすい、ということを自覚していれば、少しは避けられるのではないでしょうか。