ではネガティブなムードを誘発するとどうなるか

ここでは、“気分”のことを「商品とは無関係な要因から生じた感情」と定義して、商品に由来する感情(ブランドイメージ、好感度など)と区別して話を進めます。ちなみに、英語の「ムード(mood)」は「気分」のことを指し、日本語における「雰囲気」という意味合いは持ちません。

一般的に社会心理学では、ムードを、ポジティブとネガティブの2方向に大きく分けて、それらが、消費者の情報処理や商品の評価にどう影響するかを分析します。その際の実証実験では、被験者に対してポジティブ、あるいはネガティブなムードを誘発するために、映像や音楽の視聴、架空ストーリーを読んでもらう、過去の(よい/悪い)出来事を思い出してもらうことなどによって操作したあとで、商品への評価や判断を答えてもらうというのが、通常のアプローチです。

気分のよいときは商品をあまり熟慮しない

まずは情報処理に関して、ムードが与える影響を見てみましょう。ドイツのハイデルベルク大学の心理学者シュワルツらは、ネガティブなムードは、状況に問題があることを想起させて、努力を要する論理的かつ分析的な、熟慮型の意思決定プロセスを発動させる傾向が強いと主張しています。一方、ポジティブなムードでは、状況を楽観的に捉えて、努力を要さない連想的かつ経験的な、直観型の意思決定プロセスを用いる傾向が強いといっています。つまり、気分のよいときは、気分が悪いときに比べて、商品をあまり熟慮しないということです。

次に商品・サービスに対する評価に関して、ポジティブ、またはネガティブなムードが与える影響を見てみます。ある研究では、ポジティブなムードの状態にある被験者の方が、ネガティブなムードの状態にある被験者よりも、スニーカーの評価において、高い好感度を持つことが示されました。その理由として、誘発されたムードが商品とは無関係であったにもかかわらず、そのムードは商品から生じたものであると考えてしまう、「感情一致効果」と呼ばれるものであると説明されています。