納骨堂、樹木葬、合祀墓など種類もさまざま

従来の墓のまま、永代供養扱いにしてもらう選択肢があるかどうかは寺院や霊園によって異なる。また、永代供養の墓といっても、納骨堂、樹木葬、合祀墓など種類もさまざま。

「ほかの遺骨と一緒に埋葬される合祀タイプの場合は、後から遺骨を分ける『分骨』や、ほかの墓に移す『改葬』をしようとしてもできないことがほとんど。親族と話し合いをせずに決めると、深刻なトラブルに発展しかねません。しっかり話し合い、慎重に進めましょう」

遠方の墓を自宅の近くに移したい場合はどうなのだろうか。

「改葬の手続き自体はさほど煩雑ではありません。ただ、親族からの反対に加えて、従来の菩提寺とのやりとりがスムーズにいかないケースもあるので要注意です」

その寺院以外の場所に改葬すると、寺院と檀家の関係は終わる。寺院としては収入が減ることにつながるため、なんとか引き留めようと、「改葬許可申請書」への署名・捺印を渋ったり、時には法外な離檀料を請求したりするケースもある。

「依頼先が寺院の場合にはまずは先方の住職に会い、事情をしっかり説明し、理解を得ることをおすすめします」

永代供養も、改葬も親族といかに話し合いができるかが鍵

▼お墓の準備ポイント
(1)遺骨を移転する「改葬」は菩提寺・自治体・石材店へ
新たな墓などに「遺骨」を移す「改葬」。墓石は基本的に移転できないため、遺骨のみの移転となる。手続きは従来の墓がある市区町村役場で「改葬許可申請書」を受け取り、寺院など墓地管理者に署名捺印をもらったうえで提出。「改葬許可証」を受け取り、移転先の墓地管理者に提出する。同じ寺院の永代供養の墓に遺骨を移す場合は役所での手続きがいらないケースが多い。従来の墓は石材店に更地にしてもらう。
(2)勝手な散骨は条例違反になる可能性も
遺骨を粉砕し、パウダー状にしたものを海や山、成層圏などに撒いて弔う「散骨」。日本では散骨にまつわる法律はないものの、好き勝手に散骨していいわけではない。遺骨だとわかる状態で散骨すると、遺骨遺棄罪とみなされる恐れがある。また、「熱海市海洋散骨事業ガイドライン」のように、散骨のルールを条例として定めている自治体もある。なるべく散骨業者に依頼し、ほかの人が不快な思いをしないよう配慮が必要だ。
明石久美
行政書士
明石シニアコンサルティング代表。相続や終活のコンサルタントとして活躍。全国の企業や団体に向け年間120件以上のセミナーを行っている。