ひとりっ子の“中年ひきこもり”に目立つ親の年金搾取
最近、話題に上がることが多くなったのが「8050問題」です。
ひきこもりの人の高齢化が進み、50代前後になっている人が少なくありません。親は80代前後に達しており、その親子が同居しているケースが増えているのです。
子が長年ひきこもりを続けていても、親が元気なうちはなんとか生活は成り立ちますが、親もとっくの昔に現役を引退し80代ともなれば、自分が要介護になることや死期が近いことを考えざるを得なくなり、「自分が死んだら、収入のないわが子はどうなってしまうのか」と焦燥感に駆られます。
中年となった子のほうも、そうした事態が迫っていることを察している。「自分に親の介護ができるだろうか」「親が死んだら生活の糧の年金も入ってこなくなる」といった不安が襲いかかり、親子ともども精神的に追い詰められていくわけです。
この「8050問題」は今年5、6月に川崎と練馬でたて続けに起こった悲惨な事件によって社会的にクローズアップされました。5月28日、川崎・登戸でスクールバスを待つ小学生を殺傷した犯人は51歳の男で伯父の家でひきこもり生活を送っていました。
犯人が自殺したため事件の真相はわかりませんが、介護が必要になった80代の伯父・伯母が男に自立を促したことが、犯行の引き金になったといわれています。
その4日後には練馬で76歳の父親が44歳になるひきこもりの長男を殺害する事件が起きました。長男は家族に暴力を振るうことも多く、「川崎の事件のようなことを仕出かすのではないか」と危機感を持ったのが殺害の動機と伝えられています。父親が元農水事務次官だったということも世間に衝撃を与えました。
このふたつの事件が起こってからは、メディアはこぞって「8050問題」を取り上げるようになりました。
40~64歳のひきこもりの人は推計61万3000人
内閣府によると、40~64歳のひきこもりの人は推計で61万3000人いるということです。「8050問題」に直面しているのは当事者である親子だけではありません。例えば、介護の現場で介護サービスを提供する人々も該当します。とりわけ矢面に立つことが多いのが、介護サービスを受ける高齢の利用者と接することが多いケアマネジャーでしょう。
「確かに、そういう状況(ひきこもりの息子・娘と同居)にある利用者さんと遭遇する機会は多いですし、さまざまな不安や問題を抱えながら介護生活を送っている方も見ています」と語るのは首都圏のある市で約20年ケアマネジャーを務めているTさんです。
Tさんによれば、担当することになった利用者の家に、ひきこもりの子がいるかはわからないところから仕事が始まるといいます。
「介護を認定する際にもらった調査資料などから家族構成はわかるのですが、私たちと対応するのは利用者さんご本人だけで、子どもさんは一切出てこないこともある。そういう時は勤めに出ているのかなと思うわけですが、実際は家にいたというケースもあるんです。私の経験では、それが5年間わからなかったという利用者さんがいました。また、お子さんと対応する場合も、本人はもちろん親御さんが“ひきこもっている”などと明かすことはまずありませんからね。お子さんがひきこもりという事情は通っているうちになんとなくわかってくるという感じなんです」