「不特定多数から特定少数へ」は自然な流れ

オンラインサロンの流行から見える、「不特定多数から特定少数へ」という流れは、やや残念ですがSNS全体の、そしてそこで取り扱われる個々のアカウントにおいて、とても自然なことだと思います。

というのも、もはやあらゆるものと結びついてしまったSNSやそこでのアカウントを、誰もが閲覧できる状況にしておくということは、たとえるなら自宅の玄関を開けっ放しにしているようなものだから。

玄関を開けていれば、通りすがりの人はもちろん、ときには来てほしくないような人まで土足で入ることができます。ただし家主であるあなたは動くことができず、訪問者は難癖をつけ放題、というのが今の状況なのかもしれません。

あら捜しと小さな諍いの宝庫になってしまった

家入一真『さよならインターネット まもなく消えるその「輪郭」について』(中央公論新社)

しかもあなたの現実社会での居場所を探り、難癖をつけるためのテクノロジーは進化する方向にあるので、この傾向が向かう先に、ポジティブな未来は想像しにくくなっています。今の状況からさらにつけ加えれば、ぼくには誰もが警備員化してしまったようにも見えています。

よからぬものが転がっていないか常にパトロールする人、悪い輩を見つけると大義名分のもとに叩く人、さらにはそれほど悪いことをしていなくても、ノルマを果たすために強引に悪者に仕立て上げる人。そんな人たちがインターネット上を跋扈(ばっこ)しているように感じるのです。

かつてのインターネットというのは、むしろがんじがらめになった現実世界で失われた自由を求め、人々が理想を持って大きな権力と向き合う、という構図が一般的だったと思います。しかし今は、むしろ人々同士でチェックし合い、あら捜しをしては小さな諍(いさか)いを繰り広げているように、ぼくには感じられるのです。

家入一真(いえいり・かずま)
株式会社CAMPFIRE 代表取締役CEO
1978年生まれ、福岡県出身。株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を創業し、JASDAQ市場へ上場。退任後、クラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIRE創業、代表取締役に就任。他にもBASE、partyfactory、XIMERAの創業、駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の世界展開、ベンチャーキャピタルNOW設立など。
(写真=iStock.com)
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