8月下旬に発表された総務省調査によれば、コロナ禍で日本人のネット利用時間がテレビ視聴時間を逆転したことがわかった。統計データ分析家の本川裕さんは「10、20代の若年層だけではなく30、40代以降の壮年層にもネット依存が確実に広がっている。また、若い世代の女性のほうが男性より現実逃避でネットに走る割合が高い」という――。

ネット利用時間とテレビ視聴時間がついに逆転

インターネットの利用手段がパソコンからタブレット、携帯電話、スマホへと広がっている。加えて、この2年余りは、コロナ禍による外出控えの生活変化もあって、若年層を中心にホームページ、メール、SNS、動画配信などのインターネット利用時間が大きく伸びており、だんだんと中高年に限られてきていたテレビの視聴時間をついに上回った。

今回は、こうした情報通信メディア状況の変化を示すデータを分かりやすく紹介するとともに、それが引き起こしている社会的問題の一端について解説することとする。

総務省の情報通信政策研究所は、インターネット、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌、電話などの情報通信メディアの利用時間と利用時間帯、利用目的及び信頼度等について調査するため、2012年から「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(注)を実施している。

(注)手っ取り早く実施できる登録会員対象のインターネット調査がおおはやりであるが、この方式では対象者の多くがネット習熟者となるため、調査内容がネット利用を含む実情である場合は、バイアスがかかりすぎて、実情を把握することが難しい(例えばネット利用時間は通常よりも長くなると考えられる)。
そこで、総務省のこの調査では、13歳から69歳までの男女1500人を層化した全国125地点から無作為抽出し、訪問・調査票留置方式で毎年、調査を実施している(調査時期は年度後半)。調査票は毎15分ごとの生活行動・情報行動を記す「日記式調査票」とメディアの利用目的、信頼度等の項目を含む「アンケート調査票」からなっている。ずいぶんと手間のかかった調査を毎年実施しており、結果についてはかなり信頼の置けるものとなっている。

この調査の最新時点である2021年度の結果が、8月26日に公表された。今回、紹介するのはまだほやほやのデータであり、たぶん新聞などに登場するのはもう少し経ってからだろう。

図表1には、まず、全体として、テレビを見る時間や新聞を読む時間と比べてインターネットを見る時間がどのように変化してきているかを図示した。

国民1人当たりの平均で、2004年に1日当たりのインターネットの利用時間は2000年の9分から37分にまで増加し、初めて、新聞を読む時間の31分を上回った。その後、2019年までに、新聞は8分まで落ち込む一方で、インターネットは2時間を超えるまでに急増している。

一方、テレビの視聴時間(録画による視聴を含む)は、2000年代の前半にはほぼ3時間半ぐらいだったのが、2010年代は微減傾向をたどり3時間前後にまで減少した。

そして、ついにコロナ禍の影響で家庭でのメディア利用時間の増えた2020年には、テレビの視聴時間はそれほど伸びない中でインターネットの利用時間は大きく増加し、その結果、テレビとインターネットがほぼ同等となった。そして2021年にはテレビの視聴時間が大きく落ち込む中で、ネットが伸び続け、ついに大逆転を果たすこととなった。

まさに、時代の転換点を示す変化であると言ってよいであろう。