ネット上の誹謗中傷に対する規制が強まっている。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「悪質な書き込みへの対策として、ヤフーのように本人確認を導入するのが一番効果的だ。しかし、主要プラットフォームの足並みがそろっていないと、対策の行き届いていないところに悪質なユーザーが流れることになる」という――。
スマートフォンでSNSに投稿する女性の手元
写真=iStock.com/mapo
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ヤフコメ赤文字の記事はヒットか炎上か

「ヤフコメは無法地帯でひどいコメントばかり」

Yahoo!ニュースの公式コメンテーターを務めていることもあり、公式コメントの下に表示される匿名コメント欄(通称ヤフコメ)について、こんな声をたびたび耳にする。ヤフコメには、建設的な良いコメントも少なくないのだが、炎上した時は確かにひどい。

Yahoo!ニュースは、新聞・通信社やウェブメディアなどが配信した記事を掲載するポータルサイトであり、ここに記事が転載されると驚くほど読まれる。特にトップページ上部にある「Yahoo!ニュース トピックス」(ヤフトピ)に掲載された時のアクセス数はすさまじく、「Yahoo!砲」といわれるほどだ。記事の配信元へのアクセスも増えるため、掲載を望むウェブメディアは多い。

一方で、それだけ多くの人が読むため、ひどい炎上も起きる。コメントが1000件超など特に多いと、見出し末尾のコメント数が赤文字で強調して表示され、話題になっていることが一目でわかる。単に話題性のある記事として盛り上がっているならいいのだが、誹謗ひぼう中傷が相次いで投稿されているケースもある。

AIと人の手で管理されるヤフコメ

それでも、われわれが目にしているコメント欄は、ヤフーによって管理され、悪質な投稿が排除された後の状態だ。

ヤフーはコメントポリシーで、特定の個人に対する人権侵害や誹謗中傷に該当する投稿や、不快感や嫌悪感を生じさせるような表現を使って他人やほかのユーザーを攻撃する投稿を禁止し、違反したコメントは削除している。

実際の対応状況を見てみよう。「2021年度メディア透明性レポート」によると、Yahoo!ニュースにおける21年度の投稿数は1億5923万2000件(月平均1326万9000件)で、投稿削除件数は513万1000件(月平均約42万8000件)。投稿削除件数が占める割合は3.22%だ。

新型コロナの感染拡大を受けた緊急事態宣言やオリンピック・パラリンピック開催を背景として投稿件数自体が大幅に増加、それに伴って投稿削除件数も増加した形だ。

ヤフーでは、AIと約70人の専門チームでニュースサイトや各種サービスを24時間体制で監視している。削除件数全体の75.5%は、コメントポリシーに抵触しているとしてAIが投稿からおよそ数秒以内で自動削除しており、ユーザーの目に触れることはほとんどない。