若者の価値観がわからない、感性についていけていないかも……。そんな悩める大人たちに、今後日本の消費者としてのコアになっていく若い世代の本音を紹介するこの連載。今回は「恋愛」をテーマに、高校生&大学生5人を集めて座談会を開催しました。男女の立ち位置が大きく変化してきていることに驚くはず。司会と解説は、若者の消費動向を追いかけているサイバーエージェント次世代研究所・所長の原田曜平さんです。
座談会メンバー
Aさん 早稲田大学2年生。まだ恋愛をしたことがない。趣味は食べることとYouTubeを見ること。女性
Bさん 地方の大学4年生。現在彼氏はいないが、片思い中。趣味は音楽鑑賞と、SNSで美容アカウントをチェックすること。女性
Cさん 青山学院大学4年生。交際4年目になる彼氏がいる。趣味はネットフリックスで韓国ドラマやアニメを観ること。女性
Dくん 慶應大学大学院1年生。現在彼女はいない。大学で、オールラウンドサークルと野球サークルに所属。趣味は映画鑑賞。男性
Eさん 高校3年生。彼氏あり。企業のインターンなどに積極的に参加中。女性

恋愛離れの理由1 中高一貫校の増加

【原田】さて、「若者の恋愛離れ」という言葉が言われるようになってから久しく経ちます。実際、バブルの頃と比べると恋人のいる若者は大幅に減っていますし、初体験の年齢も上がっています。東大の調査では、今の30代の1割がセックス未経験らしいです。

そんな恋愛離れをしている若者の実態を探るために、まずはみんながこれまで経験してきたリアルな恋愛について聞いていきたいと思います。

【Aさん】私は今まで誰とも付き合ったことがありません。小・中・高が一貫校だったので、幼なじみと恋愛に発展することがどうしても考えられなくて……。

【原田】互いに恋愛感情が芽生えていたとしても、幼なじみ同士が恋愛関係に発展するまでには大きなハードルがある。漫画の『タッチ』でさえ相当な時間と労力がかかっているもんね(笑)。

最近、公立でも中高一貫校が増えている。「勉強」という観点では良い面もあるけど、新しい出会いがなくなるという「恋愛」の観点ではあまり良くない面があるのかもしれないね。中高一貫校などエスカレーター式の学校の増加が若者の恋愛離れを促進している説(笑)。

【Aさん】それ、絶対あると思います(笑)。みんな幼なじみなので、高校の時はカップルができると周りから相当いじられる環境でした。

【原田】妬み嫉みが出てしまう日本文化の象徴的な出来事だね(苦笑)。タッチで言うと、和也と南ちゃんが周りから冷やかされる感じか(笑)。いや、達也の方か?!

【Aさん】一方、高校と違って大学ではサークルやバイトなど多くのコミュニティがありますし、実際に私はたくさんのコミュニティに所属し、新たな出会いも増えたので、すぐに彼氏ができるものだと思っていました。が、気づいたら大学1年生が終わってしまいました。周囲に「彼氏が欲しい」と言いつつも、本当に欲しがっているのかどうか、今は自分でもわからないです。

【原田】幼なじみばかりの高校から出会いの多い大学に入ったのに、彼氏ができなかったのは自己分析では何が理由だと思う?

【Aさん】私自身が大学生になっても自分磨きを怠っていたことが理由としてあると思います。例えば、メークを面倒くさがってすっぴんで登校することが多かったり、服装にもあまりこだわらずに生きていました。「基本的な身だしなみ」が整っていない女子に対して、魅力を感じない男子は多いのではないでしょうか。

【原田】メークや洋服を気にしない程度がどれくらいかにもよると思うけど……。でも、君と同じ早稲田大学に通う女子、いわゆる「早稲女(ワセジョ)」は、昔からノーメークな女子も多い校風だったと思うし、慶應や青学や立教よりかはノーメークが異性からも同性からも許容されやすい環境だと思う。また、仮にノーメークでも、早稲女の皆さんは中身が魅力的な女性が多いから、それが必ずしも恋愛の障害にならないことも多い気がします。それにメークばっちりで着飾る女子より、ナチュラルで素朴な感じが好きな男子はいつの時代も一定数いると思うし。友人の金髪ジャーナリストの津田大介さんは「早稲女しか愛せない」なんて常々言っているもの(笑)。こんな発言をする男性が昔から一定数いるくらい、早稲女には魅力的なタイプが多いと思いますけどね。

でもさ、君の仮説が正しいとすると、逆に言えば、メークしてオシャレさえすれば、男子に対して君の魅力が簡単にアピールできるはずなのに、なぜ、しなかったんだろう?

【Aさん】私が大学生になってから「この人に好かれたい」という感情を抱いた男性がいなかったからだと思います。もし一回でも誰かにそんな気持ちを抱いたのであれば、その人にアピールするために、面倒だとしてもメークやおしゃれに気を遣うようになっていた気がします。