恋愛離れの理由5 恋愛の大変さをさとってしまう
【原田】あとさ、Aさん、自分が本当に彼氏が欲しいのかどうかが分からない、って言っていたけど、これはどういう意味なんだろう? まだ理想的な男性に出会っていないだけで、出会ったら彼氏にしたかったりするんじゃないのかな?
【Aさん】いろいろ考えた結果、私は口では彼氏が欲しいと言いつつも、本音では彼氏を欲しいと思っていないのだという結論に達しました。その理由として、女友達さえいれば私の毎日は事実として楽しいからです。もちろん、彼氏ができたことがないので、彼氏がいる楽しさをまだ知らないかもしれないという前提の上での意見です。
女友達のほうが気軽に遊べるし趣味が合います。また、彼氏がいる女友達と遊んでいるときに、「やっぱり、女子同士で遊ぶのが一番だよね」と言う人が複数いて、やっぱり私は女友達がいるだけで十分だと感じてしまいます。また、彼氏関係で非常に悩んでいる女友達をここ半年で3人も見てきたので、そんなに面倒なのであればいないほうがいいやと思ってしまいます。
【原田】昔だって結局は、同性同士でいるのが一番居心地良かったりしたわけなんだけど、ひょっとするとそうした結論に達するのが、昔より早まってきているのかもしれないね。
ネットやSNS上で、自分が経験していないことも含むさまざまな情報に触れるようになっているから、さんざん恋で痛い目を見た後にやっぱり同性が良いという結論に達するのではなく、実際に恋愛をする前にそうした結論に至ってしまう。
僕が提唱した「さとり世代」という言葉が2013年に新語・流行語大賞にノミネートされたけれど、まさに「さとり世代」という言葉通りの現象。自分で経験する前にさとってしまっている、ということなのかもしれない。
恋愛離れの理由6 親との仲が良すぎる
【原田】男女ともに選ぶ側に回ったという話や、インスタのストーリーが恋心を冷めさせるという話など、いくつか「若者の恋愛離れ」の今の時代っぽい原因が出てきたけど、他にも若者の恋愛離れの原因になっている今っぽいことってある?
【Cさん】「親子仲の良さ」が恋愛離れに影響していると思います。今の若者は親子仲がとても良いと思います。
【原田】え? 親子仲が良いと恋愛離れするの? 確かに今の若者たちは親子仲が本当に良くなってきているよね。例えば、「母の日市場」が年々かなり伸びている(図表1)。この主たる要因は、昔は青年男子が母親にプレゼントを贈る、なんてケースは少なかったのに、今は至極当たり前のことになっていたりするから。
【Cさん】私も周囲の友人たちも、片思いの段階で両親に恋話をしますし、恋人ができたら両親に紹介するのが普通です。また、恋人にしたいと思う人は、両親に紹介して認めてもらえる人が良い、と言う友人も多くいます。そうなると、女・男遊びが激しそうな人ではなく、誠実で将来の見通しが明るそうな人を好むようになると思います。個人の嗜好で選ぶなら理想は低くても良いのですが、両親のことを考えると自然と理想が高くなってしまうのではないでしょうか。
【原田】確かに、まず前提として、今は親子仲が本当に良くなっているよね。僕の「マイルドヤンキー論」の重要なポイントの一つがそこにあるんだけど、かつて親に反抗することが多かった「ヤンキー」層が、親と仲良しな「マイルドヤンキー」層に変わった。なぜ、親子が昔より仲良くなったかは拙著『ママっ子男子とバブルママ』(PHP新書)に詳しく書いてありますが、要は昔のように古くさくて口うるさい親像が大きく変わってきている、ということはありそうです。
昔の「お見合い結婚」は個人と個人の結婚というよりも、家と家との結婚に近いものもあったと思うけど、今は親子仲が良くなって家と家との結婚に近くなっているのかもしれないね。ただし、昔の「お見合い結婚」のように、良家かどうかというステータス面というより、「親とも相性が合うかどうか」が恋愛や結婚の緩い前提条件になってきている可能性があるね。
親と子供が主従関係にあった時代に主流となっていた結婚スタイルが「お見合い結婚」。そして、子供が親との主従関係から逃れる時代が「恋愛結婚」だとすると、親と子供が対等なお友達関係になった今の結婚スタイルは「親も婚(親にも認定されないといけない結婚)」と言えるかもしれない。
昔は条件が良ければ親も認定してくれていたケースが多かったと思うけど、今は相手の親と相性が合わないといけないから、下手すると昔の「お見合い結婚」よりハードルが高くなっている可能性があるね!