空気の含有率が低いと、アイスクリームの密度を高め、濃厚でクリーミーになるのだという。一方で、特に夏向けには果実系商品も手がけ、こちらはジューシーな食感を打ち出す。
バニラ味が日本でダントツに売れる謎
外資系ブランドが「消費者の目が厳しい」日本で成功する秘訣に、「本国のやり方を押しつけず、文化や風土を意識して変える」がある。日本人の好みに合わせた商品開発もその1つ。
ハーゲンダッツの定番フレーバーで人気第3位の「グリーンティー」は、1996年に日本側から持ちかけて、日米共同で開発された商品だ。当時は「真緑のアイス」が米国の担当者にピンと来なくて、日本の茶畑や茶室に案内してお茶文化を理解してもらったと聞く。
その後も「カスタードプティング」がヒット商品となり、餅を入れた「華もち」シリーズの「きなこ黒みつ」が新たな“和スイーツ”として大人気となった。現在は米国本社からも「日本はユニークな市場」として許容度が高まっているようだ。
「ユニークな市場でいえば、他国の販売数量は把握できていませんが、そもそもバニラ味が1位という国は日本ぐらいのようです。各国の1位は、ストロベリーやチョコレート系などどれもバラバラだと聞いています」(黒岩氏)
なぜ、日本人はそこまでバニラ味が好きなのか?
「日本では『アイス=バニラ』がディファクトスタンダード(事実上の標準)で、特に年配者の方は指名買いをされます。シンプルな味を好む文化が根強いですし、バニラが他の素材と組み合わせやすいのもあるでしょう」
スーパーに並ぶ前は直営店でファンを増やした
ラグジュアリーブランド以外の商品ブランドは「お高くとまる」のではなく、どこかで「降りてくる」姿勢も大切だ。高級感を打ち出しているハーゲンダッツも、販売手法の歴史はそうだった。
現在は全国各地の小売店で買えるが、1984年の初上陸時は、東京・南青山の直営店をオープンした。青山通りに面したこの店は、オープン当初から若者を中心に行列となった。今では珍しくない「行列文化」のさきがけだったのだ。
1980年代は直営店での販売が主体で、2013年まで一部を運営した。筆者が最初に取材したのは15年前(2004年)で、国内店舗数は66店あったが、総売り上げに占めるショップの売上比率は6%に過ぎなかった。
「当時は直営店に来て、体験として楽しんでいただくことも重視していました。ある時期まで『ハーゲンダッツのファンづくり』には不可欠な存在だったのです」(黒岩氏)