季節限定商品+CMの戦略が奏功していた

丸亀製麺では、季節限定商品とテレビCMをセットで打ち出すのが定番の戦略になっている。「うま辛坦々うどん」と「牡蠣づくし玉子あんかけ」では、女優の松岡茉優がメインを飾るテレビCMを放映していた。

この手法が始まったのは、2014年8月からだ。当時の新メニュー「肉盛りうどん」の販売を促進するため、タレントの武井壮が「ヤバい」を連呼しながら同商品を食べる様子を映したテレビCMをオンエア。丸亀製麺にとって、初めての全国テレビCMになった。

これが大当たりし、8月の既存店売上高は前年同月比15.7%増と大きく躍進した。前年割れが続いていた不調を振り払った。客数も8.3%増と大きく伸長した上、同商品は並盛り590円と定価が高額だったため、客単価も6.8%増と大きく高まった。

「肉盛りうどん」の後には、「タル鶏天ぶっかけ」「知床いくらうどん」「Wカツカレーうどん」「だし玉肉うどん」といった季節限定商品の販売に合わせてテレビCMを放映したが、いずれも好評で集客に大きく貢献したという。「肉盛りうどん」発売の14年8月から16年7月まで、既存店売上高は24カ月連続で前年超えとなった。

広告宣伝の費用対効果悪化が見て取れる

だがテレビCMは諸刃の剣だ。当たればいいが、販売につながらなければコストがかさむリスクをはらんでいる。

事実、丸亀製麺では広告宣伝の負担が重くなっている。トリドールHDの利益は大きく減少している。19年3月期の営業利益は、前期比69.8%減の23億円と大幅な減益となった。売上高営業利益率は前期から5ポイント低下し、1.6%と近年に見られない低水準となっている。人件費や原材料費のほか、広告宣伝費が大きな重しとなった。丸亀製麺事業の広告宣伝費の割合は、前期と比べて0.5ポイント上昇している。費用対効果が悪くなっているのだ。

丸亀製麺は今年4月23日にも値上げを実施している。トリドールHDの広報によれば、うどん6商品や天ぷらなどトッピング商品の一部を10円値上げしている。例えば、「釡玉うどん」の並盛りは350円から360円に引き上げた。

客の移ろいが激しい飲食業界では値上げは鬼門だ。丸亀製麺も、18年の値上げでその難しさを実感しているだろう。利益率改善のためにはやむを得ず、再び値上げに踏み切ったということなのかもしれないが、ますます客離れが加速するおそれがある。かつての絶好調がうそのように深刻な事態に陥る可能性もあり、今後の行方に注目したい。

佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売り上げ拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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