見直し・廃止論に走る前に企業が整備すべきこと
こうした考えはトヨタだけではなく、終身雇用を標榜する多くの企業にも共通するものだろう。
もちろん企業によって会社と従業員の関係について、さまざまな考えや哲学があってもいい。むしろそのほうが健全である。斜陽業種や、高収入の50代以降の社員が働かず下の世代に不満がたまっている企業の場合、社員の入れ替え・縮小などによる人員の刷新で生き残りを図らざるをえないこともあるだろう。
しかし、「終身雇用の見直しが正しい、当然である」といった一部の意見をあたかも全体の趨勢のように扱うやり方は不公正かつ不健全ではないだろうか。
仮に終身雇用を見直していくのであれば、これまで企業に依存してきた教育や能力開発の仕組みをどうするのか。
ジョブ型採用からはじき出される学生や、途中で追い出される社員の再教育と就職のあっせんなど、雇用の流動化に対応した社会的セーフネットが不可欠になる。
経団連は単に会長にアドバルーン的な発言させて終わりにするのではなく、経済界のリーダーとして終身雇用に代わる政策プランをパッケージとして提示してほしいものだ。