超国家的なコミュニティが乱立する時代が来る
社会がコミュニティへと分化してきた背景についても考えてみよう。
世界は長らく国境によって分断されてきた。ビジネスの世界も企業体単位で戦うことが常識だった。
そうした「断絶の時代」に風穴を開けたのがインターネット。ウィンドウズが出てきたあたりからインターネットという世界への扉が開き、グーグルの登場やグローバル資本主義の台頭で世界は「遍在かつオープンな時代」へと入った(図表5)。
そして近年、フェイスブックやインスタグラムなどによる「仲間分け」が起きた。個人の社会的なつながりや信用がコミュニティ内でたまっていき、レーティングの対象となる社会に入ったのだ。多層的コミュニティ時代の幕開けである。
今後の社会で予見されることは、そうしたコミュニティが成熟していき、法(ルール)や教育、福祉、市場、貨幣などのインフラを持った超国家的なコミュニティが乱立することである。
それは地域に根ざした小規模コミュニティや共通の価値観を持った人たちが集うコミュニティ、そしてギルド(組合)のような同じスキルを持った人たちによって作られるコミュニティかもしれない。私たちは日本国民であると同時に、そうした超国家のコミュニティに多層的に所属していくことになる。お金が信用という起源に戻るように、社会は小さな共同体という濃厚な人間関係に戻っていく。
「自分らしい生き方とは何か?」を問い続ける
そんな時代に必要になることは、各自が自分なりのコミュニティ・ポートフォリオを持つことだ。つまり、自分の持っているリソースを、どのコミュニティにどれくらいの割合で割くのかについて真剣に考えないといけない。
最近では大企業による副業解禁の動きが目立ってきているし、これからはプロボノ活動(自分の専門知識やスキルを活かして社会貢献活動を行うこと。pro bono publico)も大事になる。
今までは「仕事とプライベートの割合をどうするか?」というシンプルな問いでしかなかったが、多層的なコミュニティの時代では「自分らしい生き方とは何か?」という本質的な問いを持ち続けることが重要になる。
事業家・思想家
早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は、貨幣論、情報化社会論。1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラミング事業をはじめとする複数の事業、会社を経営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。