※本稿は、山口揚平『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「高層ビルがガラス張り」の理由を考えたことがあるか
「なぜ、大半の高層ビルはガラス張りなのか?」
素朴な疑問だが、その答えを知っている人は少ない。ガラス張りはデザイン的に良いからなのか、いつでも取り替えられるからなのか。いずれも間違いではないが、本当の理由はもっと単純で、ビル全体を軽量化できコストを下げられるからだ。
コンクリートでビルを形成するとビル全体が重くなり、それを支えるために膨大なコストがかかる。ガラスを用いればビルを軽くできる。
ただ毎日をなんとなく暮らしている都会人は、この素朴な疑問に答えられないだろう。ビル自体が日常風景の中に溶け込み、疑問にすら思わないからである。
しかし、地方から東京に遊びにきた子どもが高層ビル群を眺めたら、「なんでガラス張りの建物ばかりなの?」と思うだろう。そしてその解を手元のスマホで探すことになる。今の時代、解は調べればすぐにわかる。
地方の人が都会の風景に関心を持つように、実は物事と距離を置くことはとても価値がある。しかし私たちは目の前の仕事と日常につい追われ、時間を消費し、本当に解くべき問いを間違える。
日本全体の問題は、少子化でも高齢化でもない。私たち現役世代の、正しく問いを立てる力の低下にある。
「解を問う」のが20世紀の教育だったならば、「問いを問う」のが21世紀の教育であろう。だから私たちはもっと旅に出て、外の世界から考えなければいけない。
グーグルはいつでも解を教えてくれるが、問いは教えてくれないからだ。
知識量よりも「愛嬌力」の時代
「頭が良い人」と聞くと、あなたはどのような人を思い浮かべるだろうか。
20世紀は「頭が良い人」と言えば、高学歴の人や知識が豊富な人を指した。パソコンにたとえればハードディスクの容量が大きい人である。
だが量販店に行けば1テラバイトのハードディスクが数千円で買える今、知識や情報の物量に価値はない。むしろ過去の思い出や使う予定のない情報がいっぱい詰まったハードディスクはジャンクであり、どんどん捨てていく必要がある。
「頭の良さ」は、20世紀から21世紀で変化している。思考力や想像力が重要になり、情報や知識などのハードディスクは重要ではなくなっているのだ。
かつてはウルトラクイズなど、知識が豊富であれば人気者になることができたが、これからは情報量より、いつでもグーグルを検索して答えを引き出せる「うろ覚え力」が大切になる。短期記憶力よりも、人に何でも聞ける「愛嬌力」のほうが必要だ。
また思考力・想像力を養うことができれば、「問いを問う力」や「つながりを見出す力」、「物事をイメージする力」、さらには「ストーリーテリング力」など、幅広い能力を培うことができる(図表1)。