情報量が増えるほど人は考えなくなる

情報を軽視するつもりはない。だが「思考>情報」を若い頃から徹底し、実践している経験から、思考は情報に勝ると思う。情報はあくまでも思考のための“潤滑油”である。情報はあくまでも思考の素材であり、目的ではないのだ。

世の中は超情報化社会と言われるが、情報量が増えれば増えるほど人は思考しなくなる。これを私は「思考と情報のパラドクス」と呼ぶ(図表2)。

「思考量>情報量」を意識することが大切(図表=『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』)

思考を鍛えたいのであれば、情報を減らし、思考の割合を増やすことだ。痩せたいのなら筋トレ(思考)の前に炭水化物(情報)を控えろ、と言われるのに似ている。

思考の正体とは「意識を自由に動かすこと」にある。人の意識は有限なのに、むやみに情報を取り入れてしまうと、意識はそれらの情報と結合してしまう。これが「固定観念」というものである。

情報はスポンジのように意識を吸い尽くす「毒」でもある。

毒となる情報に意識が囚われると、頭がカチコチに固まってしまうのだ。

賢い人というのは頭が柔らかい人であり、それは意識が自由な状態の人を指す。情報に意識が絡め取られておらず、ニュートラルな状態にあるとも言える。だからこそ自由に意識を漂わせ、前提を疑い、問いを改めることができるのだ。

新聞は「化学調味料満載の不健康な食材」のようなもの

山口揚平『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社)

こうした理由で私は、22歳の頃から新聞を読んでいない。もちろん必要な情報があればしかるべき人に聞き、新聞のデータベース検索も使って情報を取りに行く。最先端の情報も入手する。

だが、今の記事はそもそもピントが合っていないと思われるし、事実かどうかすらわからない。新聞とは毎日軽トラックで化学調味料満載の不健康な食材を運んでいるようなものであり、思考活動の妨げになると考えている。

もし情報の洪水から逃れたいのなら、一定期間、情報を遮断することだろう。これを「情報デトックス」と言う。日本語の通じない海外に行くのも良いし、ネット回線がつながらない山奥の湯治場に身を置くのも良い。情報流入量を常に意識して、「思考量>情報量」という状態を維持することが大切である。

山口 揚平(やまぐち・ようへい)
事業家・思想家
早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は、貨幣論、情報化社会論。1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラミング事業をはじめとする複数の事業、会社を経営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。
(写真=iStock.com)
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