21世紀において「知識」はお金を生まない

20世紀にお金を生むのは知識だった。そう指摘したのは経営学者のピーター・ドラッカー氏だ。21世紀では知識はお金を生まないだろう。知識は誰でも手に入る。お金を生むのは社会的関係(信用)である。ただ21世紀、知識はあらゆるコストを下げるために使われる。健康に関する知識があれば治療費や保険料が下がるのは言わずもがな、確かな知識と情報は購買にかけるコストをも下げる。

たとえば先日、私はスーツを新調することにした。ファッションに疎いので周囲にアドバイスを求めたら、どうやらエルメネジルド・ゼニアのスーツが最近評判が良いことがわかった。早速お店に行って値札を見たら、普段見るものより桁が一個多い。外見は信用力に影響するので妥協すべきではないが、さすがに50万円は予算オーバーだ。そこで私はスーツに関する情報をグーグルから拾い出した。

スーツは、いわゆるイタリアブランドも東欧で縫製されているのが主であるし、結局のところ、型と生地と縫製の組み合わせで成り立っている。ならば既成品をそのまま買うのではなく、個別に入手して自分で組み合わせたほうが安いと考えた。

50万円のブランド品を25万円で手に入れる「知識」

私は同じ銀座にあるオンワードのオーダーメイドの店へ向かった。店員に聞くとゼニアの型もあるし、ゼニアの生地(そもそもゼニアは生地メーカーである)を周辺のデパートから取り寄せることもできると言う。

こうして私は、ゼニアで買うのと変わらないスーツを半値で手に入れることができた。違いは縫製とタグがゼニアのものではないことだが、本当にタグが必要なら、どこかのショッピングサイトで調達できるだろう(その必要は感じないが)。

50万円のブランド品を25万円で手に入れることができたのは、知識があったのと少しばかり考えた(スーツの購入に必要なプロセスを分解して個別に発注した)からにすぎない。

個別の部品知識と組み合わせの方法さえ知っておけば、現代ではあらゆる高額製品(たとえば家や家具、車、会社の経営資源など)をそのまま買う必要はない。

21世紀において、知識はお金にならないが、コストを下げることができるのだ。