「ヨコ社会」が経済の中心を担うようになる

人々は「国家」や「企業」といった大規模単一価値観のソサエティの限界を悟りつつある。新しいコミュニティへの民族大移動が静かに、だが確実に進行している。

それはタテ社会からヨコ社会へ、中央集権的な社会からネットワーク社会へのシフトと見ることができる。

国や大企業に代表される中央集権システムは、図で表すと円錐のような形をしている。時間やお金を下から吸い上げて上から再配分するのが特徴で、すでにでき上がったマジョリティのシステムは基本的にこのような形をしている(図表2)。

タテ社会とヨコ社会(画像=『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』)

これがいわゆるタテ社会だ。

一方で、これから社会の中心となっていくネットワーク社会とはフラットな世界で、資源を吸い上げる機構としての円心がない。必要な資源をその都度、横に配分していく。個人間の直接のやりとりもあれば、そのフラットな世界の中でハブとして機能する個人やコミュニティも乱立することになる。これがヨコ社会だ。

現時点でヨコ社会の住民は主にタテ社会のスキームに収まらないマイノリティが占めるが、いずれヨコ社会が経済の中心を担うようになる。

非効率な「タテ社会」の生産性

タテ社会とヨコ社会では何もかもが違う(図表3)。

タテ社会とヨコ社会では何もかもが違う(画像=『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』)

世の中に存在するタテ社会が今後、自己変革を迫られていくのはもはや必然である。その理由はタテ社会の非効率な生産性にある。

たとえば大企業の多くが新しい世代のIT企業に勝てないのは、無駄なことに時間を割く文化を捨てられないからだ。図表4を見れば、代表的なわが国の大企業の生産性が海外企業に比べて低いことがわかる。

日本のインフラ大企業の生産性(画像=『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』)

社内の話だけではなく、外部のサプライヤーに対してのコミュニケーションコストも含めれば、企業によっては全体のコストの7割はコミュニケーションコストで、純粋な生産コストは3割ぐらいしかない。

先日、私たちはある大手企業に事業分析のアルゴリズムを納品した。そのアルゴリズムはコンサルティングファームのパートナーとAIのエンジニア、そして何人かの数学が得意なメンバーを土日に集めてスピーディに開発したものだが、一番苦労したのはそのアルゴリズムを導入してもらうまでのクライアント対応だった。

膨大な資料を作って、20人くらいを前に、当たり前のように「機械学習とは何ぞや?」というレベルからくり返し説明をしないといけない。これでは対等なパートナーシップは結べないし、効率的な仕事もできない。