※本稿は、山口揚平『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「素直さ」は訓練で身につけられる
私は職業訓練における最大の美徳は「素直さ」だと思っている。素直ということは脳のハードディスクドライブに空きがあり、幼児の体のように思考も柔軟だということだ。
実際、私の会社ではできるだけ社会人経験のない人を採用するようにしている。それは経験がないほうが仕事の「型」を教え込みやすいからである。経験のない人はそれを自分の弱みだと考えがちだが、実はそれはアピールポイントなのである。さまざまな新人に仕事を教えてきた立場から言って間違いない。
仮に30歳を過ぎていて職能が身についていない場合でも、やはり最大のバリューは素直さだ。卑屈になる必要はない。
素直さは生まれ持った特性ではなく、訓練で身につけられる。物事を俯瞰で見る。物事をゼロイチではなくグラデーションで見る。もう少し具体的に言えば、自らの人生で否定してきたものをあえて肯定してみる。嫌いな人、苦手な領域、避けてきた勉強を肯定してみる。
このような訓練を1カ月くらい続けると、一点に吸着していた自分の思考パターン、すなわち偏見や固定観念を一つひとつ解きほぐすことができる。
イノベーションは「霞が関」からは起きない
訓練するのはいいが、どこで頑張るかという話もある。この国の未来に閉塞感を抱いている若者の多くは、心密かに「維新」を求めている。だが、残念ながらこの先の日本に「黒船」がやってくる理由は見当たらない。
では今の若者は、どこに活路を見いだせばいいのか?
方策は2つある。「地方」と「海外」である。
イノベーションは常に「周辺」から起こる(図表1)。なぜなら「周辺」は「現実」とこすれ合い、摩擦し合っているからだ。日本のコアである霞が関は現実に触れていないので、そこでは空論ばかりが飛び交う。
よって、もし志があるなら地方で旗揚げするのが一つの手だ。幕末維新も地方の脱藩志士によって成し遂げられたことを思い出そう。もしくは一度、この国を出て行くのも手だ。
これまでは「日本企業」と「日本国民」と「日本政府」は三位一体として捉えられてきたが、今後は分裂する。