90%の会社では「手に職がつく」ことはない
私は学生から進路相談を受けるが、就職を勧めていない。お金と健康の問題を抱えた会社勤めの友人がいたら、即時退職を勧めている。
それはなぜか?
そもそも会社に就職するのは「手に職を」、あるいは「信用を」という理由からだろう。でも90%の会社では手に職がつくことなどない。旧世代の産業システムのやり方や会社独自の文化を身につけることは、市場価値から言えばリスクにもなりうる。それに社会的信用を担保できる企業はせいぜい3~5%。誰もが知るような世界的企業と、三井、三菱といった商社の一部くらいだ。
これからの時代、信用は個人で作っていくものである。
私の考えるキャリア設計の解の一つは3段階に分かれる(図表2)。
10~20代は「修行期」と捉え、マスターやメンターの側で仕事の技を盗んだり、留学やインターンで海外を経験したり、大学院などでビジネスを学ぶ。特に20代は信用をどんどん作っていかなければいけない。その信用を使うのは30~40代以降。お金と同じで浪費をせず、コツコツ貯めることが大事である。
「20%上乗せ」で信用を貯める
信用をスピーディに貯めるためには、求められた仕事に対して必ず相手の期待値に20%上乗せしていくことが重要だ(私はこれを120%ルールと呼んでいる)。
逆に言えば、自分の思考と知識の限界から8割のレベルで十分な成果を挙げられる仕事を選ぶことが上司やクライアントへの誠意だと思う。研鑽(さん)は自分のお金で積むべきである。そうやって信用残高を増やしていくことで見えてくるものがあるはずだ。逆に修行期間である20代にお金や地位や名誉を求めるとうまくいかない。
30代、40代は「孤軍奮闘期」と捉え、起業を経験したりしながらリーダーシップとマネジメントを学ぶ。30歳前後になれば自然と新しいミッションが芽生え、一念発起する人が出てくるはずだ。ただし、業界をまたいで大きな挑戦をしていきたいなら、40歳くらいでようやくちゃんとした価値が出せるようになる(逆に40代にしっかり価値を作れないと、50代以降で後はない)。
そして50代、60代は一国一城の主となり、会社を率いながら人を守る。
このように武道で言う「守破離」の順番に沿って、人生のうち3回は非連続的にキャリアを変えて、出世魚のように生きていくのがベストだと思う。