「築き上げてきた名声に泥を塗る結果となった」
また、変装の理由については「素顔をさらして住居に向かったとすれば、間違いなく膨大な数のカメラがバイクやハイヤー、ヘリに乗って追いかけたでしょう。彼の小さな住居は全世界に知れ渡ります。生活を取り戻すどころか、健康すら損なわれてしまうでしょう。そのような事態は絶対に避けなければなりません」と説明。さらにこう釈明した。
「その方法として、私の頭にひらめいたのが昨日の方法でした。それは失敗しました」
「私の未熟な計画のために、彼が生涯をかけて築き上げてきた名声に泥を塗る結果となってしまいました」
「私の計画に進んで協力してくれた友人たちに大きな迷惑をかけてしまいました。とても申し訳なく思っています」
本当に深い意味はなく、マスコミの目をかわそうとしただけなのだろうか。あのゴーン氏のやることだけに疑ってしまう。
「ゴーンさんもおもしろがっていた」
「無罪請負人」「カミソリ弘中」と呼ばれ、高野氏と同じくゴーン氏の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は報道陣に対し、7日、こう話していた。
「変装には私もびっくりしました。保釈に立ち会った弁護士のアイディアだと思う。いろんなアイディアがあっていいが、あれはあれでユーモアがある」
「ゴーンさんもおもしろがっていたと聞いています」
今回の保釈の成功は彼の作戦勝ちといわれている。沙鴎一歩が興味深く感じたのは、ゴーン氏が「おもしろがっていた」という点である。
逆境の中でも「遊び心」を失わない強さ
ゴーン氏は年をまたぐ108日間も東京拘置所で自由を奪われていた。しかも仏ルノーと日産の会長職を追われて、これまでの社会的地位を失っている。冬の寒い拘置所生活は生身にこたえるし、失職は精神的ダメージが大きい。それにもかかわらず、あのコミカルな変装を嫌がらずにおもしろがる。ゴーン氏という人物は、逆境の中でも「遊び心」を失わない強い人間なのだろう。
今年1月8日、東京地裁で勾留理由を開示する手続きが行われた際、法廷に現れたゴーン氏は「アイ・アム・イノセント(私は無実)」と主張した。体重が10キロも減る過酷な状況下で、あの力強い主張には驚かされたが、今度の変装をおもしろがる余裕にも感心させられる。
なお「アイ・アム・イノセント」という発言については、「法廷で"私は無実"と訴えたゴーン氏の狙い」との見出しで、1月17日付の連載で書いた。参考にしてほしい。