長く自由を奪うことで精神的に追いつめる

「人質司法」の問題については、に朝日新聞の社説(3月7日付)と産経新聞の社説(同)が詳しい。朝日社説はこう書いている。

「裁判所、検察官、弁護人の三者で争点や主張を整理する手続きが、まだ進んでいない段階での異例の措置だ」と指摘したうえで、こう書き進める。

「前会長の身体拘束がいつまで続くかに注目が集まり、外国メディアからは日本の刑事司法に対する批判も出ていた」
「そこには誤解や偏見も少なからずあったが、否認を続けると拘束が長くなるのはデータからも明らかだ。長く自由を奪うことで精神的に追いつめ、争う意欲を失わせる手段として、捜査当局が勾留手続きを利用してきたのは紛れもない事実だ」

極端に言えば、戦前の特高警察のやり方と同じ

朝日社説は海外からの報道による日本の司法批判を正面から受け止め、「人質司法と呼ばれるこうした悪弊は、もっと早く是正されてしかるべきだった。しかしそれは果たせなかった。関係者はその教訓と責任を胸に、今回の事件を勾留実務の改革に結びつける契機にしてほしい」と改革を呼びかける。

検察の主張する罪を認めない限り、保釈せずに拘留を延々と続け、取り調べには弁護士を同席させない。被告人は精神的にも肉体的にも干上がってしまう。そこが検察の狙いなのだ。極端に言えば、戦前の特高警察のやり方と同じだ。

いくら起訴された被告人とはいえ、人権はある。人質司法の改革を求める朝日社説の訴えは分かる。ただ外国メディアの誤解や偏見をしっかり捉えて書いてほしかった。これでは事情を知らない読者は置いてけぼりだ。

否認事件で保釈申請が認められるのは極めて異例

産経社説は保釈申請が認められたことに否定的だ。

「被告が起訴内容を否認している事件で、公判前整理手続きで論点が明確になる前に保釈申請が認められるのは、極めて異例だ。これを安易な先例とすべきではない」

朝日社説と同じく「異例」であると書くが、その後が「先例にするな」と大きく違う。見出しも「安易な先例化を危惧する」である。